Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

紀伊半島の淡水魚図鑑No. 17 イッセンヨウジ

イッセンヨウジ Microphis leiaspis

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イッセンヨウジ 和歌山県南部河川 -0.5m

テングヨウジとならび河川の淡水域でよくみられるヨウジウオの一種。紀伊半島では沿岸部のほぼ全域に分布するものと思われるが、南部の流程の短い小河川に多い。本種はヨウジウオ類のなかでも最も河川環境に適応した種で、流れの強い中流域まで遡上することがある。同属のテングヨウジは動きが緩慢で岸際の植生の周りなど流れの緩い場所を好むが、本種は早瀬などの流れの速い場所にいることもある。見かけによらず動きは機敏で、こんな細い身体のどこにそんな推進力があるのかと驚くほどに素早く泳ぎまわるため、採集には難儀することも。

多くのヨウジウオ科魚類と同様、オスは腹部に育児嚢をもち、メスが産み付けた卵を孵化するまで保護する。孵化した仔魚は速やかに降河し、海で生育したのちに河川へ遡上する。なお、紀伊半島で本種が再生産しているという報告はなく、毎年冬になると河川から姿を消すため紀伊半島において本種は死滅回遊魚である可能性が高いと考えられる。

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頭部。名前の由来となった黒色線が目立つ

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10月に捕まえた個体。鰓蓋の橙色が鮮やか。婚姻色だろうか?

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000,YS-01