Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

冴えないタビラの写し方

シロヒレタビラ♂ 琵琶湖 -1.0m

某月某日、琵琶湖へシロヒレタビラを見に行ってきました。

シロヒレ自体は昨年の似たような時期に撮影していたものの、この時は夜間の撮影で、寝ているからか婚姻色も冴えない個体でした。

nature-key-peninsula.hatenadiary.com

やはり昼間の鮮やかな姿を写真に収めないとシロヒレタビラを撮ったとは言えないでしょう!ということで琵琶湖某所へ。

ポイントの水深は1~2 m前後。ポイント到着後にすぐにシロヒレを発見できるほど個体数は多いものの警戒心が強く、ほとんど止まることなく泳ぎまわります。また物陰に依存する性質が強く、脅かすとすぐに岩の下に隠れてしまうこともあって撮影はかなり難しい・・・

タナゴの撮影でカギとなるのが産卵母貝で、通常オスは気に入った貝の周りに縄張りを張り、メスを呼び寄せたり他のオスから防衛したりします。オスは縄張りの中心にある貝に執着するため近寄りやすく、こうした貝を見つければ観察・撮影のチャンスが広がるのですが、母貝となるタテボシガイはそこそこ見られるものの、繁殖のピークからは少しずれていたためか近くのオスたちは興味を示しません。どうしたものかと思っていましたが、しばらくして同行者の方が縄張りオスを発見してくれました!

メスを連れるシロヒレタビラのオス

埋まっていてまったく分かりませんが、縄張りの中心にはタテボシがあり他のオスが近づくと追い払いにかかっていました。また、一度だけですが、メスを連れてきて貝覗き(産卵に適した貝か下見する)をさせていました。婚姻色は琵琶湖の個体らしく薄めではありましたが、清楚な感じがしてこれはこれでいい感じ。

ずっと観察しているとオスは臀びれと腹びれをすばやく閉じたり開いたりを繰り返す不思議な行動をしていることに気づきました。鰭は黒白に塗り分けられているため、遠くから見ると鰭の白い模様が明滅しているように見えます。恐らくメスを誘ったり、ほかのオスをけん制するシグナルとして機能しているのでしょう。白色シグナル

今回はしっかりと観察したわけではないので不明ですが、各鰭の開閉の組み合わせや回数に何らかの意味があったら面白いかもしれません。

 

www.youtube.com

 

camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO, M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

ナガレホトケドジョウ

ナガレホトケドジョウ 和歌山県 -1.0m

久しぶりに和歌山県某川のナガレホトケドジョウの谷を覗きにいきました。

ナガレホトケドジョウは本州中部と四国の一部にのみ生息するフクドジョウ科の一種で、その名のとおり流れのある渓流域にひっそりと暮らしています。本種の写真は過去に撮影自体はしていたものの、生息場所の水深があまりに浅く、潜って撮影することは到底不可能だったため、マクロレンズ(防水ではない!)の先を水の中に漬けるという苦肉の策で撮ったものでした。

このときはライティングも満足にできなかったため、ISO感度を上げざるを得ず、画質的にも満足のいく写真ではありませんでした。そこで今回は、以前本種を採集したことがある同水系の別の谷へ行ってみることに。

本種は夜行性とされており、明るいうちは岩陰や落ち葉の下に隠れて出てこないことが考えられたため、日が落ちて完全に暗くなってから谷へ入ります。上流に向かって進んでみると浅い淵や水たまりのような場所でナガレホトケドジョウがちょろちょろ動いているのを発見!個体数は割と多いようです。しかし例によって水深は5~10cm程度と激浅でハウジングを水の中に入れることすらままならなりません。

撮影に難儀しているとちょうど滝の直下で水深が1.5mほどの深みのあるポイントにたどり着きました。ここならば余裕で潜ることができる!というわけで撮影できたのがトップの写真です。

石の上にちょこん。かわいい。

光には敏感で、水中ライトの光を当てると嫌がって逃げますが、ストロボのターゲットライト程度だと割と落ち着いて行動してくれたのでそれで撮っています。生息環境と平べったい感じの見た目からドジョウの仲間とは思えず、アカザとミミズハゼを足して2で割ったような(?)印象です。

 

camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

琵琶湖のギギ

ギギ 琵琶湖 -5.0m

西日本の広域に分布し、分布域ではいわゆる普通種であることも多いギギですが、ここ琵琶湖ではかなり個体数が少なく、湖岸でその姿を見ることは稀とされています。しかし、昔から少なかったわけではなく、標本記録などから昔の琵琶湖においてもありふれた普通種だったことが明らかになっています(川瀬ほか2023)。ギギには本来の分布域外に移植され国内外来種となっている側面がありますが、この本種の拡散の原因と目されているのが湖産アユ種苗への混入です。このことからもかつての琵琶湖ではアユに混じって定着するほどの個体数がいたことが想像され、本来の生息地である琵琶湖では少なくなってしまっている一方で、移入先で近縁種のネコギギやアリアケギバチと競合問題を起こしている現状には皮肉なものを感じずにはいられません。

琵琶湖でギギが減ってしまった理由はほかの多くの湖魚と同様、湖岸環境の悪化とされ、特に産卵場となるアシ原の減少が大きく影響しているようです。これまでに筆者も琵琶湖に注ぐ川では本種の姿を見たことがあるものの、琵琶湖内では一度も見たことがなく、本当に数が少ない幻の魚なのだと思っていました。
が、今回別の魚狙いで琵琶湖北湖の某所に潜っていたところ、ギギの姿をついに捉えることができました。しかも確認できたのは複数個体で、15cmから25cm程度までの様々な大きさの個体を観察することができました。いるところには結構いるものなのか・・・

環境としては巨岩の多い岩礁帯で、隣接する水草の生えたフラットな砂礫底でも見かけました。北湖のこうした環境では普通イワトコナマズが多いのですが、ギギが複数個体見られる一方で、イワトコの姿は全く確認できませんでした。完全に筆者の想像、もとい妄想なのですがこの両種は琵琶湖内においてゆるく棲み分けているのかもしれません(根拠ナシ)

 

引用文献

川瀬成吾・中江雅典・篠原現人.2023.石川千代松が収集した魚類標本から見る明治中期の琵琶湖の魚類相.魚類学雑誌,70: 147–160

 

camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
strobe:D-200, D-2000

時期はずれのカネヒラ

婚姻色を見せるカネヒラ 滋賀県水路 -0.3m

秋に産卵シーズンを迎える、いわゆる秋タナゴのカネヒラですが、一部の個体は6~7月ごろにも短い産卵期をもつことが知られています。そのことは知ってはいたのですが、これまでにそうした個体を見たことがなく、噂には聞くものの幻の存在だと勝手に思っていました。

が、今回、別の魚を探して琵琶湖周辺の水路で撮影していたところ、婚姻色が発現したカネヒラたちを偶然見つけてしまいました。どの個体も全長10 cmを超える大型で、オスはメスを盛んに追尾し、メスも産卵管が伸びていたためこれから産卵を行うことは間違いないでしょう。その体の大きさから、おそらく2歳魚で、昨年の秋にも繁殖を経験した個体なのではないかと思っています。

淡水魚の繁殖はどの種も決まった時期に行うことが一般的ではありますが、今回のカネヒラのように時期はずれに行うものも少なからず知られています(サケの後期産卵群やスミウキゴリなど)。こうした時期はずれの産卵が再生産にうまく寄与しているのかはよく分かっていませんが、生まれる時期をずらすことで、アクシデント(災害や病気など)による全滅を回避したり、同種内での餌や生育場所を巡る競合を避ける効果があるのかもしれません。多様な繁殖生態をとることは、次代を少しでも多く残そうとする生き残り戦術のように思えます。

 

camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
strobe:D-200, D-2000