Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

紀伊半島

本州最南端で深海小物釣り採集

最近のマイブーム(?)は水深100~200mほどの深場で小さな魚を狙って釣る、通称「深海小物釣り*1」採集です。 おもなターゲットは深場の岩礁帯に棲むハナダイやベラ、トラギスの仲間など。こうした小型魚は底曳き網などの商業漁業の対象にならないことに加…

紀伊半島における川魚文化の覚書き

はじめに 現在のように流通網が発達し、全国で当たり前のように海の魚が食べられる以前は各地で多くの淡水魚が食されてきました。特に大規模水系である琵琶湖や霞ケ浦の周辺、あるいは海産物の入手が難しかった長野県などの内陸部では現在も川魚文化が息づい…

クロウミウマの稚魚

クロウミウマ 紀伊半島南部河川 -1.0m 先日の土曜日はひさびさに紀伊半島南部の汽水域で撮影でした。 これまでになんども通っている川ですが、夏から秋にかけて死滅回遊系の魚の出現が多く、毎年のように新たな種類の魚を見かける個人的にはイチオシのポイン…

ボウズハゼの幼魚

ボウズハゼ幼魚 紀伊半島南部河川 -0.5m ひさびさのハゼネタ。 春から初夏にかけての紀伊半島南部の河川では加入したばかりのハゼ科魚類の幼魚が群れをなして遡上している様子をしばしば目撃します。ヨシノボリの仲間やウキゴリの幼魚も多いのですが、鰭の赤…

古座川のオオサンショウウオ

オオサンショウウオ 古座川 -2.0m 紀伊半島南部の古座川で撮影したオオサンショウウオです。 本種は言わずと知れた世界最大級の両生類で、岐阜県以西の本州および、四国と九州の一部に生息します。 先日の長良川のネコギギの撮影の際、密かに狙っていたのが…

紀南のギギ

ギギ 紀伊半島南部河川 -0.5m 先日は久しぶりに地元、紀伊半島での水中撮影でした(Fishes of Kii Peninsulaとは一体…) 長らく撮影していなかった、とある魚を狙って紀伊半島南部の河川に入ったのですが、残念ながらその魚の姿はなく、代わりに見かけてびっ…

ノボリハゼ

ノボリハゼ 三重県南部河川 -2.0m 三重県南部の汽水域で撮影したノボリハゼです。以前近縁種のクチサケハゼを撮影したのと同じ場所で、いつもはクチサケが優先しているのですが、今回はなぜかノボリハゼばかり見かけました。両種が同一水系に分布する場合、…

春の広川でシロウオをいただく

先日、和歌山県中部を流れる広川の春の風物詩、シロウオ漁の体験に行ってきました シロウオは透明な身体が特徴的な体長4cm前後の小さなハゼ科魚類です。北海道南部から九州までの広い地域に分布し、普段は海に生息していますが、春になると産卵のため川を遡…

セトウチサンショウウオ

セトウチサンショウウオ 和歌山県北部 先日はTwitterのフォロワーさんの案内で1年ぶりにセトウチサンショウウオの観察に行きました。 セトウチサンショウウオは、これまでカスミサンショウウオとして知られていた種であり、Matsui et al (2019)により西日本…

稚アユの遡上はじまる

アユ 和歌山県南部河川 -0.5m 今年もアユが川に帰ってきました! 実は海での稚アユの撮影をしていた先週あたりからぽつぽつと川には入ってきているようでしたが、今週に入り本格的に加入がスタートしたようです。 撮影はお気に入りの和歌山県南部の河川の汽…

オオクチユゴイ

オオクチユゴイ 和歌山県南部河川 -2.0m 紀南地方の河川で撮影したオオクチユゴイです。 本種は本州沿岸では典型的な死滅回遊の淡水魚で、通常、河川に加入した当歳魚はその年の冬のうちに寒さに耐えられれず死んでしまうと考えられていますが、近年の地球温…

砕波帯の稚アユ

アユ 和歌山県南部 -1.0m 今年1発目の水中撮影は海からスタートです。 両側回遊魚であるアユは仔~稚魚期のうちは海洋生活を送りますが、海のどこにでもいるわけではなく、多くは砕波帯(サーフ・ゾーン)と呼ばれる水深の浅い、波が打ちつけるような砂浜域…

カタアシクラゲ?のポリプ

カタアシクラゲ?のポリプ 銚子川 -2.0m 今年初記事です。今年も変わらずのゆるペース更新になると思いますが、弊ブログFishes of Kii Peninsulaをよろしくお願いします。 写真は昨年の末に銚子川の汽水域で撮影した、カタアシクラゲの一種と思われるヒドロ…

2022年のフィールドを振り返る(下半期)

前回の続きです。どんどん振り返っていきましょう。 7月:南紀の汽水域 8月:四万十川のアカメ 9月:カネヒラ 10月:北海道遠征 11月:ビワマスの産卵 12月:冬の銚子川 7月:南紀の汽水域 遠征やら琵琶湖やらで、2か月ほど地元紀伊半島のフィールドがおざな…

2022のフィールドを振りかえる(上半期)

2022年も残すところあとわずか。今年は皆様にとってどのような年になりましたでしょうか?筆者は相変わらずフィールド三昧といったところで、淡水域での水中撮影を中心に北は北海道から南は沖縄までさまざまなフィールドに訪れました。 今回は年末恒例の振り…

潜り収め

今年最後の水中撮影は三重県南部の銚子川でした。水温も10℃あるかないかといった感じでもうすっかり冬の様相。ボラが淵に群れて泳いでいる以外は川の中は閑散としていました。 ボラの群れ 銚子川 -5.0m ビリンゴ 銚子川 -1.0m クチサケハゼ 銚子川 -2.0m 河…

銀ウナギ

ニホンウナギ 銚子川 -1.0m 昨年の10月に三重県南部の銚子川で撮影したニホンウナギの銀ウナギ(クダリウナギ)です。 ご存じのとおり、ウナギはその一生の終わりに海で産卵しますが、その準備として川にいる段階から身体にさまざまな変化が起きます。一見し…

紀伊半島の魚図鑑No32.  ホウライヒメジ

ホウライヒメジ Parupeneus ciliatus 紀伊半島での呼び名:めんどり、おじさん 分布:房総半島以南の太平洋岸、南西諸島および小笠原諸島。国外ではインド洋から西太平洋まで広域分布する。 生息環境:岩礁帯や内湾、藻場など。幼魚はタイドプールによく出現…

紀伊半島 アユの産卵群

アユの産卵群 和歌山県南部河川 -0.3m ビワマスのシーズンが終わりに近づくころ、紀伊半島ではアユの産卵が盛期を迎えます。昨年はスケジュールをうまく合わせきれずに観ることが出来なかったのですが、今年は以前から目星をつけていた紀伊半島南部の河川で…

秋の日置川とアユの色彩

アユ 日置川 -1.5m この週末は大学の後輩であるSHOWくんと、以前からTwitterで仲良くさせてもらっている中野光さんと紀伊半島南部で合同採集調査でした。トップの写真は調査の合間に日置川で撮影したアユ。これまでに見てきたアユの中でもとびきりに鮮やかな…

モヨウフグ属の仲間たち

サザナミフグ、スジモヨウフグ カスミフグ、ワモンフグ 和歌山県南部河川 -2.0m 先日は実に2ヶ月ぶりに紀伊半島の川で撮影でした(Fishes of Kii Peninsulaとは…) 潜ったのは紀南地方の、汽水域の撮影でよく訪れる川。秋の汽水域らしく様々な魚をみかけまし…

紀伊半島の淡水魚図鑑No.31 クロハギ

クロハギ Acanthurus xanthopterus 紀伊半島での呼び名:くろはぎ、くろはげ、おじろはぎ 分布:茨城県以南の太平洋岸、南西諸島、小笠原諸島。国外ではインド洋から中央太平洋まで広く分布する。 生息環境:成魚はサンゴ礁域や岩礁域。幼魚はタイドプールや…

紀伊半島の淡水魚図鑑No.30 サツキマス/アマゴ

サツキマス/アマゴ Oncorhynchus masou ishikawae 紀伊半島での呼び名:紀伊半島での呼び名:こさめ、あまご、あめご、あめのうお、のぼり(降海型) 分布:神奈川県酒匂川以西の本州太平洋側、四国、および九州東北部の瀬戸内海流入河川。 生息環境:河川上…

紀伊半島の淡水魚図鑑No.29 クサフグ

クサフグ Takifugu alboplumbeus 紀伊半島での呼び名:くさふぐ、しおさいふぐ、なごやふぐ(小型のフグ類の混称) 分布:青森県から沖縄県までの全国。国外では朝鮮半島南部から東シナ海。 生息環境:沿岸浅所から河川汽水域。ときに純淡水域まで遡上するこ…

紀伊半島の淡水魚図鑑No.27 サザナミフグ

サザナミフグ Arothron hispidus 紀伊半島での呼び名:不明(ふぐ?フグ類の混称) サザナミフグ 和歌山県南部河川 -1.5m 黒から茶色の地色に白の細かい点線模様が入る美しいモヨウフグ属の一種。腹側の模様は縦線様で体背側から背面にかけては小白斑が散在…

チョウモドキの寄生

アマゴに多数寄生するチョウモドキ 日置川水系 -1.5m 先日、和歌山県南部の日置川の上流域で撮影していると多くのアマゴの体表に茶色っぽい異物が多数付着しているのを見つけました。これは何だろうか?と撮影した写真を拡大してよく見てみるとエラオ類の寄…

ひさびさの汽水域

最近は岐阜に行ったり、琵琶湖に行ったりと地元、紀伊半島のフィールドがおろそかになっていましたが、先日は久々に紀南地方の汽水域で撮影でした。撮影地はお気に入りの小さな河川。この川は河口域まで高い透明度が保たれており、水中撮影にはうってつけの…

ウシモツゴ

三重県中部 -0.5m 6月 三重県中部で撮影したウシモツゴです。本種は岐阜県、愛知県および三重県のみに分布する東海地方の固有のモツゴの仲間で、かつてこれら3県の平野部一体で広くみられたようですが、近年では河川改修等に伴う生息環境の悪化、外来魚によ…

コクチバス調査

コクチバス 紀の川 -1.0m 先週末は紀の川でコクチバスの調査でした。ちょうど今ごろが本種の産卵期にあたるため、産卵床と稚魚の成育の状況の確認です。 本種は近年、紀の川水系で急速に個体数を増やしていると考えられており生態系への影響が懸念されていま…

キリクチ再び

このところ九州ネタばかりで”Fishes of Kii Peninsula”というタイトルから遠ざかっている当ブログですが、ちゃんと(?)地元のフィールドにも通っています。 先週訪れたのは紀伊半島奥地のキリクチ(ヤマトイワナ紀伊半島集団)の生息地、前回撮影したのが…