Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

紀南のギギ

ギギ 紀伊半島南部河川 -0.5m

先日は久しぶりに地元、紀伊半島での水中撮影でした(Fishes of Kii Peninsulaとは一体…)

長らく撮影していなかった、とある魚を狙って紀伊半島南部の河川に入ったのですが、残念ながらその魚の姿はなく、代わりに見かけてびっくりしたのが、写真のギギです。

ギギは紀の川や有田川など、紀伊半島の北西部を流れる河川では在来種ですが、それ以外の自然分布域ではない地域にも国内外来種として定着しています。主な原因は琵琶湖の湖産アユ種苗に混入したことと考えられ、かつてアユの放流種苗といえば湖産アユが主だったこともあり、ギギが移入している地域は九州から東北地方まで広範囲に及びます。

移入ギギの引き起こす深刻な問題が近縁種との競合です。本種の近縁種として九州にはアリアケギバチが、東海地方にはネコギギが、そして東日本にはギバチがそれぞれ自然分布しますが、ギギはこれらの近縁種と比べ大型に成長し、より攻撃的な性質をもつことから、同じニッチをめぐって競合した場合、優位に立つことができると考えられ、これらの種にとって大きな脅威です。すでにアリアケギバチでは筑後川や川内川など置き換わりが進行している水系もあり(福岡県環境部自然環境課,2021;古𣘺ほか,2020)、ネコギギの生息地である三重県宮川では移入ギギの駆除の取り組みも行われています。なお、移入元の琵琶湖では現在ギギは著しく減少、絶滅危惧種となっており、移入先で繁栄してしまっている現状には皮肉なものを感じずにはいられません。

紀伊半島の南部では本種の近縁種は自然分布しないため、上記の置き換わり現象こそ起きませんが、夜行性の肉食性魚類という性質から、似たような生態をもつニホンウナギなどとの競合は考えられます。今回撮影した川では個体数も多く、夜に川に入るとそこかしこで本種の姿が見られるという状況でした。幼魚から老成魚までさまざまな成長段階の個体が観察され、しっかり再生産できてしまっているようです。なお、この川には河川漁協がなく、現在アユの放流は行われていませんが、ギギがいることからかつて湖産アユの放流が行われていた可能性が高そうです。

 

老成個体。尾鰭が大きく曲がってしまっている。

 

引用文献

福岡県環境部自然環境課.2021.侵略的外来種防除マニュアル2021.p82.福岡
県環境部自然環境課,福岡

古𣘺龍星・中村潤平・是枝伶旺・米沢俊彦・本村浩之.2020.鹿児島県北西部の川内川水系における定着が確認された国内外来魚2種(ハスとギギ)の標本に基づく記録.Nature of Kagoshima,46: 259–265

 

camera : OM-1
lens : M. ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
strobe:D-200, Z-240