Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

道東で野鳥撮影とM.ZUIKO ED DIGITAL 300mm F4.0 IS PRO試用レポート

9月12日から17日の日程で北海道、道東方面に野鳥撮影メインで行ってきました。北海道は言わずと知れたバードウォッチングの聖地であり、特に道東地域は日本最大の湿原、釧路湿原を擁する自然豊かなエリアで、国の特別天然記念物のタンチョウが周年見られることもあり非常に魅力的なフィールドです。僕は普段の撮影でオリンパスマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼(E-M1 markⅡ)を使用しているのですが、野鳥撮影に使えるような超望遠レンズは持っていません。今回、遠征にあたり現在オリンパスから販売されているレンズの中で最も焦点距離が長く、野鳥撮影に最適なM. ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROをレンタルすることができましたので、試用した雑感とともにレポートします。ちなみに今回レンズのレンタルにはオリンパスオーナーズケアプラスを利用しました。結構リーズナブルなお値段でレンズを借りられるのでオリンパスユーザーの皆さまはどんどん利用してみましょう!

cs.olympus-imaging.jp

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いきなりタンチョウの出迎え。

さて、野生動物王国北海道とはいえ、初心者がぽっと行ってなんでも撮れるというほど甘くはないだろう。タンチョウやクマゲラは無理でも、シマエナガぐらいは見られたらいいな…なんてあまり期待しすぎないよう遠征前には考えていたのですが、釧路空港から北の阿寒方面にレンタカーを走らせていると、いきなりタンチョウに遭遇してしまったのでびっくりしました。その後もちょいちょい見かけたので少なくとも道東では個体数は少なくないみたいですね。

2日目以降は雌阿寒岳や湿原近郊の森林をメインに撮影しました。基本的に小鳥はハシブトガラゴジュウカラなどのカラ類が多い印象です。ゴジュウカラが平地で見られるのはいかにも北海道らしくて良いですね(本州では山地の鳥)

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シロハラゴジュウカラ。北海道では平地の鳥

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ハシブトガラ(たぶん)。コガラとの違いはわかりません。

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ハシブトガラの群れに交じっていたヒガラ。

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コサメビタキ

釧路市近郊の都市公園では目的の一つであったノビタキの姿も見ることができました。ノビタキと言えば頭全体が黒く、胸元がオレンジに染まるというカラーリングとばかり思っていましたが、あれは夏羽なんですね…冬羽はまた全然違う色彩ですが、これはこれでかわいらしいと思います。

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ノビタキ

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ノビタキ

終盤には今まで姿を見かけなかったシマエナガが来てくれました。エナガは他のカラ類と混群を作っており(この時はハシブトガラゴジュウカラシジュウカラコゲラと混群)、群れは木から木へと移り飛んでいくため、チャンスは一瞬です。基本的にカラ類と遭遇できるか否かは広い森の中で群れに当たるか当たらないかなので、鳥見初心者は歩きまくって足で探すしかないようです。鳥の生態を熟知している方なら良く来るポイントを知っているのかもしれませんが…

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シマエナガ。やっぱりかわいい。

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遭遇できたのは今回の旅で一度きりでした。

さて、今回使用したレンズであるM. ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO(以下300mm F4.0 IS PRO)はいわゆる「サンヨン」と呼ばれるスペックのレンズであり、マイクロフォーサーズで使用するため焦点距離が35mmフルサイズ換算で600mm相当となります。重量は1270gで、600mm F4.0(ロクヨン)相当と考えると小型軽量ですが、他社のサンヨンと比較するとやや重いです(例えばニコンのAF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRは755gと超軽量)。

とはいえ手持ち撮影するには問題のない重さであり、今回の撮影もすべて手持ちで行いましたが、一日使っても手が疲れることは全くありませんでした。また本レンズにはレンズ内手振れ補正機構が搭載されており、ボディ側の手振れ補正との連携で最大6段分の補正効果を得られます。これだけの超望遠で手持ちで1/30秒のとかのシャッタースピードでブレずに写真が撮れるのは大変ありがたいですね。

ちなみに性能以外で特筆すべきはその価格で、現在価格.comの最安値で約28万円とおいそれと手の出ないお値段となっています。ちなみに前述のニコンのAF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VRは19万である。ふざけるな!

kakaku.com

しかしながら高いだけのことはあり、特殊レンズを贅沢に使ったレンズ構成でオリンパス自身がオリンパス史上最高画質と謳っており、フォーサーズ規格のスーパーハイグレートレンズZUIKO DIGITAL ED 300mm F2.8をF4.0に絞ってもまだ本レンズのほうが解像力が高いそうです。思えば我々オリンパスユーザーは本レンズの発表当時、その価格と重量に驚愕し、作例の高精細さとMFT曲線のぶっ飛び具合にまた驚愕したものでした…今回の撮影した写真も等倍で見ると鳥の羽毛の一枚一枚が綺麗に解像しておりちょっと感動モノです。

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コガモ♀。これはテレコンなしで撮影。

撮影にはほとんど1.4× テレコンバーターのMC-14を使い、35mm換算で840mm相当の焦点距離で撮影しました。開放F値は1段暗くなりF5.6となりますが、テレコン使用にありがちな解像力の低下もほとんど無く、AFも高速です。野鳥撮影は焦点距離500mmでも広角と言われる世界なので、上記の焦点距離でも鳥が近すぎて困るということはほとんどありませんでした。むしろまだ焦点距離が欲しいくらい。ただ超望遠レンズそのものの扱いにまだ慣れていないので、超望遠あるあるどこを写しているかわからなくなる現象(画角が狭すぎて狙いの場所がなかなかフレームインしない)が頻発してチャンスを逃すこともままありました。まぁこの辺は慣れでしょうか・・・

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キタキバシリ。本州のキバシリとは亜種の関係ですが、違いがさっぱり分からない。

E-M1 markⅡのAF設定はほぼすべての撮影でC-AF(コンテュニアスAF)のグループ5点モードで行いました。E-M1 markⅡのファームウェア3.0で追加された中央優先仕様で真ん中の1点でフォーカスしつつ、他の4点でサポートするという運用です。いわゆる「止まりモノ」は精度重視でS-AFで狙っても良いかもしれませんが、カラ類やエナガはちょこまかと目まぐるしく動き回るため、C-AFと親指AFの併用で常にフォーカスし続けながら連射でピントのあったショットを拾っていくという感じでした。状況次第ですが合焦率は概ね7割くらいでしょうか?このあたり、E-M1XなどのAFの強いボディーで使うとまた違った結果が得られるかもしれません。

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エゾアカガエル。北海道で在来のカエルはこいつとニホンアマガエルのみ。

またちょっと驚いたのはテレコン装着時のテレマクロ性能です。もともと300mmなのである程度寄れるのは当たり前なのですが、最短撮影距離が1.4mなので小さなカエルもご覧のとおり。今回は撮影しませんでしたが鳥以外にもチョウやトンボなど昆虫の撮影にも威力を発揮しそうです。

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エゾコゲラ。本州のコゲラとは亜種の関係。当然違いは判らない・・・

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公園の橋に止まるノビタキ。距離があるとボケはなめらか。

 解像力重視のためか、ボケは特に綺麗という感じではないですが、そこは超望遠レンズ。被写体と背景に距離があると非常に大きなボケを得られます。とにかく開放から描写にキレがあり、絞っても特に解像力が変わる印象はないため、絞るのは被写界深度のコントロールのためのみとなるでしょう。

というわけで、今回は多くの狙っていた野鳥に出会うことができ、大満足の遠征となりました。次はクマゲラとかエゾフクロウを狙いに行きたいですね。またサブで一応魚採りもしたので、そちらの成果もそのうち紹介出来たらと思います。また今回大活躍したM.ZUIKO ED DIGITAL 300mm F4.0 IS PROですが、野鳥撮影の楽しさに完全に脳がやられてしまったので、そのうち購入することになると思います。まぁ値段が値段なのでいつになるかわかりませんが…冬鳥シーズン前に買えたらいいなぁ。

 

2023.1/4 追記:レンタルから3年以上が経ちましたが購入しました・・・