自然分布域では絶滅寸前なのに、移入先でなぜか繁栄してしまっている。そんな魚が日本淡水魚では何種かしられていますが、その代表例が本種ではないでしょうか?
本種は濃尾平野以西の中部地方から近畿地方の狭い範囲に分布するタナゴ類で、いずれの生息地でも生息数が著しく減少し絶滅が危惧されています。一方で江津湖を含む緑川水系ではアユ放流種苗の混入に伴うと思われる移入により定着し、現在ではかなり広い範囲でみられます。今回撮影したのもセボシタビラの撮影中に狙ってもいないのに見つけた個体で、よく見るとそこかしこで小規模な群れを作って泳ぎ回っていました。
性質はタナゴなので臆病ですが、セボシタビラに比べるとやや警戒心がうすい印象です。また時期が違うのか、あるいは水が綺麗すぎるせいか*1はわかりませんが婚姻色はそこそこといった感じ。皮肉なことですが、個体数の多さもあいまって本種をもっとも簡単に撮影できるのはここ緑川水系でしょう。本種は産卵母貝などをめぐってセボシタビラなどの在来のタナゴ類と競合し、負の影響を与えることも懸念されています。しかし、いかんせん本来の生息地では絶滅寸前なので無条件に駆除することもできず、分布域外での保全の可能性も論じられるほどで扱いが難しい状況になっています。緑川水系のイチモンジタナゴは一筋縄ではいかない希少魚保全の難しさを私たちに投げかけているのではないでしょうか。
まぁそれはそれとして、やはり綺麗なものは綺麗なのでいつか婚姻色バリバリのオスを撮ってみたいですね、江津湖の個体でも悪くないですが、できれば本来の生息地でもある紀伊半島*2で。
camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000