Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

2022のフィールドを振りかえる(上半期)

2022年も残すところあとわずか。今年は皆様にとってどのような年になりましたでしょうか?筆者は相変わらずフィールド三昧といったところで、淡水域での水中撮影を中心に北は北海道から南は沖縄までさまざまなフィールドに訪れました。

今回は年末恒例の振り返り企画ということで*1、この1年の活動記録を2回にわけて振り返ってみたいと思います。

1月:クボハゼの婚姻色

水の生き物の活動も鈍く、例年、あまりやることのないこの時期。そんな中でもこの時期ならではの被写体ということで冬から初春に婚姻色を見せるクボハゼのメスを撮りに行きました。といってもおそらく婚姻色の最高潮はもっと遅い時期…おそらく2月の下旬ほどで、1月のこの時は色の出方はほどほど、といった感じでしたが。また撮り直しにいきたい被写体のひとつです。

2月:稚アユの遡上

まだまだオフシーズンの時期ですが、2月も後半に入るとアユの稚魚の遡上がはじまります。毎年稚魚の撮影に出かけている川では撮影のタイミングを合わせることができなかったのですが、代わりに三重県南部の銚子川で撮影できました。紀伊半島を代表する清流のひとつである銚子川の美しい水のブルーをバックに、きらきらと輝きながら泳ぐアユたちという光景は水の冷たさも忘れるほどの美しさです。

3月:セトウチサンショウウオ

仕事の関係で紀伊半島の西側のほうの街に引っ越すことになり、その準備などでなかなかフィールドに出られなかった1か月でしたが、忙しい合間をぬって見に行ったのがこのカスミサンショウウオです。実はこれまで野外でサンショウウオの類を見たことが見たことがなく、水辺の生き物を撮る者としてそれはどうなのか…と思っていましたが、親切なSNSのフォロワーさんの案内で産卵のため集まるセトウチサンショウウオを見ることができました。本種は従来、カスミサンショウウオ瀬戸内型として知られていた種で、2019年に新種として記載されました。本種に限らず国内の小型サンショウウオの分類は近年急速に細分化が進んでおり、覚えられる気がしません・・・

4月:シロヒレタビラ

多くの淡水魚たちが繁殖のために動き始め、それにあわせて撮影も忙しくなる季節、、、なのですが、今年は予定がうまいことかみ合わず、水中撮影はなんとゼロ。代わりと言ってはなんですが、大阪は淀川へタナゴ釣りに行きました。狙いは婚姻色の最高潮を迎えるシロヒレタビラ。筆者にはメスしか釣れませんでしたが、同行者の方が釣り上げたオスは思わずため息がでるほどの美しさ。清楚なブルーの体色と黒白に塗り分けられたヒレコントラストには素晴らしいものがあります。

5月:九州遠征

今年初の遠征は前々から行きたいと思っていた九州でした。狙いはもちろん、地元関西ではみられない九州固有の淡水魚たち。フナ先輩をはじめとした現地の皆様のご協力もあり、撮影したいと思っていた魚はほぼすべて撮ることができたとてもよい遠征でした。もっとも印象に残ったのはやはり九州の至宝、セボシタビラ。これもまたいつかしっかり撮り直したい魚であります。

6月:イワトコナマズ

6月の撮影で印象深かったのはこのイワトコナマズです。本種は琵琶湖と余呉湖にのみ生息する固有種のナマズで、琵琶湖では北部の岩礁帯に多く生息します。これまで琵琶湖で撮影してきて、本種を見かける機会は幾度となくあったものの、実は撮影となると満足いく写真が撮れていなかったため今年こそはと思って狙っていた魚だったのです。撮影してみると本種の特徴のひとつである、普通のナマズ(マナマズ)とは一線を画す金属光沢を帯びた模様が美しく、改めて格好いい魚だなぁと思わせてくれました。今年はもう一種の琵琶湖固有種のナマズビワコオオナマズは残念ながら撮り逃してしまっているので、来年以降また狙っていきたいと思います。

 

以上、上半期のふり返りでした。上半期を通して一番印象に残ったのはやはり九州への遠征でしょうか。特に江津湖は水も透明で撮影のポイントとして非常に魅力的だったので、また数日かけてじっくり撮影に訪れたい場所ですね。次回下半期、後編に続きます。

*1:去年はしていない・・・