Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

コクチバス調査

コクチバス 紀の川 -1.0m

先週末は紀の川コクチバスの調査でした。ちょうど今ごろが本種の産卵期にあたるため、産卵床と稚魚の成育の状況の確認です。

本種は近年、紀の川水系で急速に個体数を増やしていると考えられており生態系への影響が懸念されています。昨年、紀の川本流で初めて本種を見つけて以降、いろいろとコクチバスの本水系における情報は収集していたのですが水中撮影するのは久々でした。

まずは昨年撮影を行った下流よりのポイントに入ったのですが、そこでは親魚の姿は確認されず、代わりにやや成長した稚魚の姿が多数確認されました。昨年は6月上旬でまだ成長しきっていない稚魚がみられたので、今年は産卵が少し早かったのかもしれません。ちなみに本種の稚魚は体長10 mm台のまだ小さな段階で強い魚食性を示すことが近年の研究で明らかにされています(久保ほか,2022)

コクチバスの稚魚 紀の川 -0.5m

さらに上流側のポイントに移動すると、ちょうど産卵床を守っているオスに遭遇しました。場所は水深1 mほどの砂礫底で産卵床の直径はおよそ50 cmほどです。オスは最初こちらに驚いて産卵床から離れ、遠巻きにこちらを観察してきましたが、やがて産卵床の上で定位しこちらを警戒するそぶりをみせます。ほかのサンフィッシュ科魚類と同様、卵や稚魚に対する防衛本能はかなり強いようで、ほかの小さめのコクチバスが産卵床に近づいた際にはものすごい勢いで追い払っていました。こうした卵や稚魚を守る習性は次代の生存率を高めることにつながり、本種が日本の水域で定着できた理由のひとつになっていると考えられます。

産卵床。産み付けられた無数の卵が見える。

今回潜った2つのポイントではオオクチバスもみられましたが、コクチバスの個体数のほうが多く、置き換わり現象がかなり進んでいるように思えました。やはり流水環境には本種の方が適しているようです。すでにかなりの個体が定着してしまっているにもかかわらず、本種を対象にした駆除等の対策は特に行われていないため厳しい状況ですが、今後も折をみて本種の動向を継続的に注視していきたいと思います。

 

引用文献

久保 星・福岡太一・太田真人・遊磨正秀.2022.木津川下流域におけるコクチバス当歳魚の食性.魚類学雑誌,69 (1): 69-74

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO, M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000