Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

キジムナーボウズハゼ

キジムナーボウズハゼ 沖縄島 -1.0m

最近は撮影になかなか行けない日々が続いているので、過去写真でも紹介してお茶を濁しておきます…ということで、2年ほど前に沖縄島の河川で撮影したキジムナーボウズハゼ Lentipes kijimunaです。

本種は南西諸島に広く分布するヨロイボウズハゼの近縁種で、オスの赤く染まる頭部から“酔っ払いボウズハゼ”や沖縄の伝説に登場する赤い髪の精霊、キジムナーになぞらえて“キジムナーヨロイ”などと通称されていましたが、2021年にこれまた沖縄の精霊の名前に由来するブナガヤボウズハゼ L. bunagayaとフィリピン、パラワン島に分布する L. palawanirufusとともに新種記載されました。これら3種は普通のヨロイボウズハゼが水色の模様をもつのに対し、赤色の模様をもつのが特徴です。

同属のヨロイボウズハゼと同様、渓流域の急流部に好んで生息します。日本国内では稀にしか見られないため、本来の主な生息地は東南アジアなどの南方にあり、そこから海流によって分散した個体が沖縄などに定着しているものと考えられています。

写真の個体は11月の下旬に撮影したもので、婚姻色の時期は過ぎていたのか、赤色というよりかは赤茶けた地味な体色になっていましたが、眼は赤く、普通のヨロイボウズハゼではないことは一目でわかります。なお、婚姻色が最高潮に達した本種の美しさはこんなものではなく、記載論文の筆頭著者である前田博士の所属するOIST(沖縄科学技術大学院大学)のプレスリリースには鮮烈な婚姻色の本種の写真が掲載されています。いつかこれと同じくらい美しく鮮やかな個体の姿を見に沖縄の川をまた訪れたいですね。

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000