Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

ヒスイボウズハゼ Stiphodon alcedo

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オレンジタイプのオス

先月の20日から23日の日程で沖縄島に撮影遠征に行っていました。こんなぽっと出の遠征でこんなに成果が出て良いのだろうか…と思ってしまうぐらいに今回は運が良く。見たいと思っていた魚はすべて見ることができました。現地でサポートいただいた同行者には感謝しかありません。
写真のヒスイボウズハゼも是非見てみたいと思っていた魚で、本種は現在のところ沖縄島と西表島からのみ報告されています。本種のオスの体色はナンヨウボウズハゼと同様、オレンジタイプとブルータイプのバリエーションがあることが知られていますが、今回は両タイプを確認することができました。和名の“ヒスイ”は頭部が青色、腹部がオレンジ色という本種の体色が鳥類のカワセミ(別名および漢字表記だと“翡翠”)を連想させることに由来します。また種小名の“alcedo”もカワセミの学名(Alcedo atthis)に因むものです。
本種と同属のナンヨウボウズハゼ(沖縄の川では普通種)に比べると個体数はやはり少なかったですが、一つの淵に複数の個体がいるポイントがありそこではオス同士で盛んに縄張り争いをしていました。本種やハヤセボウズハゼニライカナイボウズハゼは現在のところ琉球列島や台湾でのみ確認されていますが、これら既知の分布域では、確認されている個体数があまりに少ないことから、実際には未知の分布の中心が東南アジアなど南方にあり、そこから海流などにより偶発的に輸送された個体が加入しているものと考えられています。いつの日か分布の中心たる本種の“楽園”になっている川に潜ってみたいものです。

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ブルータイプのオス

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000