以前も記事にしましたが、和歌山県北部の某水系には本来分布しないはずのオヤニラミが移入により生息しています。水ぬるむこの季節。そろそろ彼らの繁殖シーズンが始まっているのではないかと思い、3時間近く車を走らせオヤニラミが棲む川に向かいました。
潜水し観察してみるとぽつぽつと狙いのオヤニラミを見ることができました。基本的には狙いの魚がいるのは喜ばしいことなのですが、でもこいつら、移入だからな… と彼らが国内外来魚であるがゆえの複雑な思いが逡巡します。しかしながら本種が格好良く、良い魚であることには変わりありません。
単独でいる個体もいましたが、繁殖期ということで卵を守っているオスの姿をよく見かけました。卵は水没した木の枝やアシの根本に産み付けていることが多いようです。オスは産卵場所から半径1mほどを縄張りにしており、指やカメラを近づけると果敢にアタックしてきます。
卵をよく観察してみるととうっすら仔魚の姿が透けて見え、眼も確認できます。こちらの卵はもう孵化間近といったところでしょうか?
本種の繁殖生態を見て気になったのが、ガサガサと言われるたも網を使った採集では岸際の植生を蹴り込んで魚を網に追い込み捕りますが、そこにオヤニラミの産卵場所があった場合、容易に破壊されてしまうだろうということです。この場所は移入集団のため気にしなくても問題はないでしょうが、在来のオヤニラミの生息地でこの時期に採集する場合には本種の繁殖に配慮した方法で行うことが望ましいと思います。
この河川にはオヤニラミとは因縁の仲(?)のムギツクも生息しています。もっともここではオヤニラミは外来のため、托卵する割合はかなり低いようです。本種は結構神経質で特に大型の個体は全く寄らせてくれません。シュノーケルクリアをする音にも驚いてすぐに逃げるか物陰に隠れてしまいます。
今回、ワイドマクロの撮影には新たに購入したINONの水中マイクロ魚眼レンズUFL-M150 ZM80を使用したのですが、狙い通り広い範囲を写しつつ、被写体にぐっと寄った迫力のある写真が撮れました(卵を保護しているオヤニラミの写真2枚がそれ)。本来UFL-M150 ZM80はコンパクトデジタルカメラ用のコンバージョンレンズですが、今回はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZを50mmにセットしたものをマスターレンズとしました。微妙に右側が片ボケのようになってしまいましたが、装着が甘かったかな…
本レンズはレンズ前0cmからピントが合う素晴らしい特性をもっていますが、逆におよそ15㎝以上被写体から離れるとクリアな像が得られません。そのため近寄っても逃げない被写体にしか使えず、また普通の魚眼レンズのような使い方もできません。使える場面と被写体がかなり限定されますが、その尖った性格を活かすことができれば他にはない面白い写真が撮れそうです。
撮影機材
camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro, M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ+UFL-M150 ZM80
strobe:D-200, YS-01