Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

古座川のオオサンショウウオ

オオサンショウウオ 古座川 -2.0m

紀伊半島南部の古座川で撮影したオオサンショウウオです。

本種は言わずと知れた世界最大級の両生類で、岐阜県以西の本州および、四国と九州の一部に生息します。

先日の長良川のネコギギの撮影の際、密かに狙っていたのがこのオオサンショウウオでした。しかし、その時は姿こそ見られたものの、大岩の下に隠れてしまっており、尻尾しか見えないという状況…朝ならば全身が出てきているかもしれないと思い、早朝に同じ岩の下に行くと180度回転しており頭は拝めましたが、相変わらず岩の下から出てこず、頭だけが写った残念な証拠写真を撮ってその時は終わりました。

和歌山に帰ってきても、オオサンショウウオのことが頭をよぎります。なんとかして全身を収めた写真を撮りたい!とは言えオオサンショウウオのためだけに何度もはるばる岐阜まで通うのはさすがに骨が折れます。ということでもっとも近場の生息地である和歌山県南部の古座川に見に行くことにしました。

近場ならば、なぜ今まで撮りに行かなかったの?と思われるかもしれませんが、実は古座川のオオサンショウウオは外から持ち込まれた、いわば外来種なのです。古座川では1960年代に兵庫県の但馬地方から持ち込まれた個体が繁殖しており、上流域のとある支流ではかなり広範囲で見られるようです。生態系になにか重大な被害を及ぼしているというわけではないようですが、やはり元々はいなかった生き物、地元でもアユやアマゴを食べてしまうとしてあまり良く思われない方もいるようです。一方で清流古座川のシンボルとして観光や地域振興に役立てようという動きもあり、古座川のオオサンショウウオは微妙な立ち位置にいると言って良いでしょう。

外来種だからと言ってその生き物の被写体としての価値が落ちるというわけではないですが、どうせなら在来の、本来の生息地での姿を見たいという思いはやはり残ります。ただ、現在は西日本各地のオオサンショウウオが中国大陸からの外来種チュウゴクオオサンショウウオと交雑し、置き換わりが進んでいる状況もある中で、今のところ古座川の集団はそうした遺伝子汚染とは無縁です。皮肉なことですが、国内の他の地域に由来しているとは言え、古座川の個体は日本古来の姿を保ち続けていると評価できるかもしれません。

というわけで、古座川にやってきたものの、先日の雨の影響か、結構増水しており、撮影できないほどではないですが、場所によってはかなり強い流れがあります。それでも川を遡行していくと、大岩のそばに鎮座している個体を発見しました。

体長70㎝ほどとオオサンショウウオとしては特別大きいというわけではありませんが、それでも結構な迫力。しばらくすると歩き始めたので、慌てて追いかけます。

普段撮り慣れている(?)魚と比べると形が全然違うので、構図がまとまらず撮影には苦労しました。魚の場合、ワイド撮影のときは魚眼レンズで思い切り寄ってバシバシ撮ればそれだけでそれなりに絵になることも多いですが、オオサンショウウオの場合、頭の大きさだけが強調されて思っていたのとは違う写りに… このあたりは経験が必要そうです。

その後、撮影した個体はちょっと立ち寄れない流れの強い瀬にそのまま歩き去ってしまいました。上記のとおり今回の古座川は水位が高く、あまり撮影向きの状況ではなかったので、またコンディションの良いときに再訪してみたいですね。

 

camera : E-M1 markⅡ
lens :  M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO, LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm/F2.8-4.0(陸上)
strobe:D-200, D-2000