Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

アユの稚魚

今年はやや遅れているという情報もあり、撮れるかどうか心配していましたが、無事に遡上したばかりのアユの稚魚の撮影ができました。

昨年は中途半端な絞りで撮ってしまってピンボケ写真を連発したので今回はかなり絞って撮影しています。氷魚(ひうお)と呼ばれる透明な稚魚も美しいですが、やや成長し、身体に色がついてきたころの個体も赤、青、緑の色素胞がそれぞれに輝いて美しい!

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アユの稚魚 和歌山県南部河川 -1.0m

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アユの稚魚 和歌山県南部河川 -1.0m

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水中ライトをバックに逆光で撮影

構造色によるものなのか、逆光時などに身体が虹色に輝くことがあります。狙って撮るのは難しく、辛うじて写っているのはこの一枚のみ。。。本物はもっと綺麗なので是非バシッと撮ってここで紹介したいところです。

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虹色の輝きが見える

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

 

汽水の泥ハゼ

みなさま、あけましておめでとうございます(2月)

2021年もゆるゆるペースの更新となりそうですが、今年も当ブログ“Fishes of Kii Peninsula”をよろしくお願いします。

さて、フィールドの方ですが、生き物の活動も鈍く、ほとんどオフシーズン、かつドライスーツが股の方から微妙に浸水するようになってきたという理由で撮影にもあまり行けておりません(はやく修理しなきゃ…)

そんな中でも冬から初春にかけて美しい姻色に染まることで知られる汽水ハゼのクボハゼの撮影に行きたい考え、先週の話ですが三重県南部の某河川に撮影に行ってきました。

潜ったのは河口域のかなり泥深い場所。汽水域特有の淡水と海水が混じり合うことによる”ゆらぎ”と、息継ぎのたびに泥を巻き上げて著しく透明度が落ちるため、撮影はおろか、観察にもシビアなコンディションです.しかしツマグロスジハゼやクチサケハゼ、カマヒレマツゲハゼなど冬にも関わらず南方系のハゼたちの姿を多数見ることができました。

 

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ツマグロスジハゼ 三重県南部河川 −2.0m

 

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クチサケハゼ 三重県南部河川 −1.0m

 

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ウロハゼ 三重県南部河川 −1.5m

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コノハミドリガイ 三重県南部河川 −1.5m

特にクチサケハゼやノボリハゼがこの時期まで死滅でずに生き残っているとは驚きでした。また異なるサイズの複数個体が見られたため、越冬している可能性が高そうです。

目的のクボハゼこそ見られなかったものの、予想外の泥ハゼダイビングとなり楽しめました。冬でこれだけ見られるのですから、夏から秋のハイシーズンにはさらに面白そうな種が出現しそうでこれからが楽しみです。

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

2020年のフィールドを振り返る(後編)

前回の続きです。どんどん振り返っていきましょう。

 

7月 琵琶湖遠征

 遅まきながらこれが今年初の遠征となり、親友のR君と琵琶湖に行ってきました。メインターゲットのひとつであるイワトコ&ビワコオオナマズは空振りでしたが、ハスが爆釣したり、ビワヨシノボリとオウミヨシノボリの美しい姿を写真に収めることができました。

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ビワヨシノボリ 琵琶湖 -3.0m

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オウミヨシノボリ 琵琶湖 -0.5m

 

 7月 沖縄遠征

 調子に乗って沖縄にも遊びに調査に行きました。メインは深海釣りと沖縄の魚食べまくりツアーでしたが、メンバーの皆さまの協力もあり、淡水域での撮影もしっかりと行うことが出来ました。

本格的に水中写真を初めてから沖縄に行くのは初めてで、アオバラ&キバラヨシノボリ、ボウズハゼの仲間各種、ツバサハゼなど沖縄らしい魚に出逢えて感動しました。

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キバラヨシノボリ 沖縄島北部河川 -0.5m

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ナンヨウボウズハゼ 沖縄島北部河川 ー0.5m

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ツバサハゼ 沖縄島北部河川 -1.0m

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料理も美味しかった!

 


8月 宮川のネコギギ

 夏真っ盛り。本当に暑かった今年の夏は休日はほとんど水の中に避難していた気がします。8月の撮影で印象深かったのはこのネコギギ、宮川でも生息数は多くない上に警戒心が強く撮影には苦労させられました。

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ネコギギ 宮川水系 -1.5m

8月 暗い淵に群れるアユ

 よく死滅回遊系の撮影に行くこの川にアユがいるのは前々から知っていましたが、8月のこの日はいつもは川全体に分散しているアユたちが深い淵の一か所に何百匹も群れており、その規模に圧倒されました。ちょうどお昼すぎだったこともあり、陽の光が射し込んで神秘的な光景を織りなし、この瞬間を逃すまいと夢中でシャッターを切りました。

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アユの群れ 和歌山県南部河川 -1.5m

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9月 オオウナギ

 今年の9月は台風や秋雨前線の影響で増水しなかなか撮影に行けない状況が続きましたが、そんな中で撮影に行ったのはこのオオウナギ和歌山県南部の河川では珍しくないですが、なかなか夜の川にワイドレンズを持ち出す機会がなかったため撮れずにいた魚でした。本種はその体格の割に非常に臆病で接近するとすぐに逃げてしまいます。

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オオウナギ 和歌山県南部河川 -1.5m

10月 ビワマスの遡上

岐阜と琵琶湖流入河川に産卵シーズンのサツキマスビワマスを撮影しに行きました。岐阜のサツキマスのほうはなんとか姿を拝めた…という感じでしたが、琵琶湖では運よく多くのビワマスのに出会うことができました。来年は産卵シーンも狙ってみたいですね。

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ビワマス(メス)琵琶湖流入河川 -1.0m

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ビワマスの群れ 琵琶湖流入河川 -1.5m

 

11月 晩秋の渓谷

徐々に水が冷たくなり、生き物の気配も薄くなってくるこの時期。水中の景観と紅葉を組み合わせて撮影してみようと思い立ち、熊野川水系の上流部の渓谷に足を伸ばしてみました。出会える魚の種数としては特筆するところが無いものの、その分普段はあまり撮らない水景の撮影に集中できたと思います。

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淵に沈む紅葉 熊野川水系 -0.5m

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ゆらめく大岩とウグイ 熊野川水系 -2.0m

12月 アユの産卵

今年の最後に力を入れたのはアユの産卵シーンの撮影です。アユの産卵シーズンは10~11月ぐらいですが、温暖な紀伊半島では12月の半ばまで産卵行動が見られます。身体を激しく震わせながら一斉に産卵する様は冷たい水の中だということをしばし忘れさせてくれるほどに感動的な瞬間です。

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アユの産卵群 三重県南部河川 -0.2m

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産卵の瞬間 三重県南部河川 -0.3m

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と、こんな感じでコロナ禍で大変な中も比較的フィールド活動としては充実した年になったのではないかと思います。来年も撮影や採集に邁進していく所存ですのでよろしくお願いします。

2020年のフィールドを振り返る(前編)

2020年も残すところあとわずか、今年は新型コロナウイルスのせいで今までに経験のない出来事が連続する大変な年となりました。特に上半期は緊急事態宣言が発令されたこともあり、自粛続きで思うように活動できなかった方も多いのではないかと思います。かく言う僕も緊急事態宣言中は外には出ず大人しくStay Home・・・

 

nature-key-peninsula.hatenadiary.com

 

してなかったぁぁーーー!!(反省してまーす)

 

日記というほどではないのですが、フィールドに出た日は活動内容や出会った生き物の記録をメモ的に残していて、それを見ると今年のフィールド出撃回数は78回。結構出てんじゃねぇか。そのうち撮影に行ったのは45回と、例年以上に水中撮影に力の入った年となりました。特に撮影機材がストロボやライト類を含め、ようやく一通り揃ったり、撮り方もマニュアル撮影に一新してみたり、写真が雑誌(アクアライフです)に掲載されるなど、今後のアマチュア水中写真家(?)としての活動を占う上でひとつの転機となる年になったのではないかという予感がしています。

ということで撮影した写真を中心に2020年のフィールド活動を振り返ってみたいと思います 。

 

 

1月 野鳥撮影(魚は無し…)

まだコロナが対岸の火事だったころ。魚趣味としてはオフシーズンということで、魚メインでのフィールドにはいきませんでした。なぜか山に登って鳥を撮っていたり…(鳥も好きなんです)

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ジョウビタキ 奈良県奈良市

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ヤマガラ 和歌山県有田川町 1月

2月 三重県銚子川

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銚子川 ゆらめく水底 -2.0m

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銚子川下流の”まいこみ淵” 深さは6mを超える

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”まいこみ淵”に群れる稚鮎

寒さに弱いので2月もフィールドは控えめ(せっかくドライスーツを買ったのに)。この月の後半に三重県南部の清流、銚子川に久々に潜り、その圧倒的な透明度と美しさに改めて驚かされました。さすが「奇跡の清流」とか言われているだけのことはありますね。

 

3月 上流域のアマゴとタカハヤ

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タカハヤの群れ 和歌山県南部河川 -1.5m

日本国内でもコロナが広がりを見せた頃。トイレットペーパー騒動が起きたりもしましたね。この月も休日に用事があったりでなかなかフィールドにはいけず。渓谷で有名な和歌山県南部の某清流でタカハヤやアマゴの撮影に行きました。ここも銚子川に負けず劣らず水の綺麗な場所。透明度が高い場所は潜っていてそれだけで気持ちがいいですね。撮影的にもあまり気を遣わなくて良いですし…

 

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アマゴ 和歌山県南部河川 -1.0m

4月 若鮎の遡上

本格的に感染が拡大し世の中が大混乱した時期です。僕はというと新年度ということで職場が変わり、紀伊半島の東側のとある街に引っ越しました。緊急事態宣言も発令され世の中が息苦しくなる中、いつもと変わらぬ生き物たちの営みに心洗われました(不要不急のフィールドに行っていたのは内緒)。

写真は和歌山南部の某河川に群れていた若鮎。この川は漁協もないようなごく小さな川ですが、毎年多くのアユが遡上するお気に入りの撮影スポットです。

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若鮎の群れ 和歌山県南部河川 -1.0m

5月 熊野川水系

 5月のフィールドでとりわけ印象深かったのはこの熊野川水系での撮影でした。とにかく透明度が高く、潜っていて気持ちがいい。特に深い淵でアユの群れに囲まれた時は圧巻でした。川から上がった後に話しかけてこられた地元の方曰く一年で一番透明度が高い時期だそうです。

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深い淵に群れるアユ 熊野川水系 -1.5m

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アカハライモリ 熊野川水系 -0.5m

5月 オヤニラミの卵保護

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オヤニラミのオス 和歌山県北部河川 -0.5m

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卵を守るオス 和歌山県北部河川 -0.5m

ちょうどシーズン真っ盛りだろうと思い、オヤニラミの撮影に行ったのも5月。狙い通り卵を保護している最中のオス個体に出逢えました。上の写真なんかは魚眼コンバーションレンズを付けて撮影しているのですが、今見ると四隅がかなり流れてて画質悪いですね…撮り直しに行かなくては。

6月 梅雨の汽水域

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クモギンポ 和歌山県南部河川 -2.0m

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サツキハゼの求愛 和歌山県南部河川 -2.0m

 

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サツキハゼの群れ 和歌山県南部河川 -2.5m

今年の梅雨は例年よりも長く、雨による濁りのため撮影には不向きなコンディションがだらだらと続きました。そんな中でも面白かったのが汽水域での撮影。この時期はハゼたちの繁殖期の真っ只中で、そこかしこでサツキハゼやヒナハゼ、クロコハゼが求愛していました。フィンスプの瞬間などは来年もじっくりと狙って写真のレベルアップを狙いたいところ。

 

以上、今年の上半期の振り返りでした。こうして見てみるとコロナもあったので、仕方がないですが近場しか行っていないですね。来年は状況も変わると思うので、同じ時期でももう少し紀伊半島の外に出たいところ。マニアックですが、春に琵琶湖へイサザの撮影とかに行ってみたいですね。

 

次回、下半期に続く(to be continued…)