Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

琵琶湖遠征記(前編)

完全に紀伊半島と関係なくて恐縮なのですが、去る7月4、5日にかけて滋賀県琵琶湖へ採集と水中撮影に行ってきました。
琵琶湖といえば言わずと知れた日本淡水魚の聖地であり、ビワコオオナマズ、ニゴロブナ、ホンモロコなど、他では見ることのできない固有種にも枚挙に暇がありません。
周年さまざまな魚たちを見ることができますが、今回は7月上旬ということで、観察しやすい浅場に寄ってきているであろうイワトコナマズビワコオオナマズ、それと繁殖のため流入河川に入ってきているハスとスジシマドジョウ2種(オオガタとビワコガタ)が狙いです。

ちなみに筆者はかなりのぼっち気質で普段の撮影や採集はほとんどソロなのですが、今回は頼もしい相棒として大学以来の友人で岐阜在住のR君に来てもらいました。彼とは大学は違うのですが、お互いに釣り好き魚好きということで共通の友人を通じて仲良くなった不思議な間柄です。彼は渓流、アユ、ジギング、シーバス、タナゴ釣り等々、ジャンルを問わず釣りならなんでもするかなりの釣りキチであり、毎年春になると釣れもしないのに福井県九頭竜川サクラマスを狙いに行き、毎回ボウズを食らって喜んでいるなかなかMな人物でもあります。

遠征当日は雨。しかも数日前から雨続きで濁りが入り水中撮影には最悪のコンディションであることが予想されます。状況が良ければ金曜日の夜から行ってやろうかと思っていましたが、期待できそうもないので土曜日の朝にあまり気乗りしないまま車で和歌山から三重県を通りひたすら北を目指します。ちなみに僕が在住している新宮市から最初の目的地である湖西地方までは約270km、4時間となかなかタフな道のりです。

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湖西のシンボル。白髭神社の鳥居

11時半ごろようやく待ち合わせ場所近くに到着。R君との集合時間は12時だったので時間調整のため、車を止めて雰囲気の良さげな用水路探しでもすることにしました。狙いはオオガタ&ビワコガタスジシマドジョウです。

 

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しばらくうろうろしていると、上の写真のようなまぁまぁいい雰囲気の水路を発見、網を入れてみるとトウヨシノボリ(オウミヨシノボリ)やウツセミカジカ、ウキゴリなどが次々と網に入ります。少し場所を移動して採集を続けると…

 

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オオガタスジシマドジョウ Cobits magnostriata

出ました、オオガタスジシマドジョウです。本種はスジシマドジョウの仲間の最大種で琵琶湖の固有種でもあります。周年明瞭なスジシマ模様を持ちますが、繁殖期のこの時期は特に太く、濃くなります。地色のクリーム色とのコントラストが美しい!文句なしに最高にカッコいいスジシマドジョウでしょう。ほかにはニシシマドジョウ、ビワヨシノボリやアユ(コアユ)、ウグイ、スナヤツメ幼生(写真撮ってないけど)を採集して終了。短い時間でしたが、琵琶湖らしい魚を採集でき楽しめました。

 

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ニシシマドジョウ Cobits sp. BIWAE typeB

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ビワヨシノボリ Rhinogobius biwaensis

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ウツセミカジカ Cottus reinii

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ウキゴリ Gymnogobius urotaenia

結局採集に熱中しすぎて待ち合わせ時間を過ぎたため、R君に用水路まで迎えにきてもらい(クズ)、次に向かったポイントは琵琶湖北西部の某流入河川。ここでは釣りでハスを狙います。ここは以前R君が大学の調査でハスを釣ったことがあるポイントということで期待が高まります。増水していますが、とにかくハスの餌になりそうなサイズのアユが多く魚っ気は十分。とりあえず釣りの上手いR君にルアーを投げさせて様子見することにしましょう(クズ)。

R君がアップクロスに小さなミノーをキャストし、トゥイッチでアクションをつけてやるとすぐに答えは出ました。

 

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ハス Opsariichthys uncirostrais uncirostrais


婚姻色と追星の出た綺麗なオス。27㎝ほどと良型です。顔つき、色合い、各鰭のフォルムなどなどすべてがカッコいい…実に素晴らしい魚です。

居ても立っても居られず、僕も同じようにトラウト用のミノーを投げるとすぐにヒット!コイ科とは思えぬ強烈な引きとシイラかと思うくらいにジャンプを繰り返すファイトはかなりスリリング。想像していた以上によく引くのでびっくりしました。いやぁこれは楽しい。
その後も毎キャストごとにほぼ何かしらの反応があります(ただし、ハスかと思いきやコアユが引っ掛かってくることもしばしば)。どうやらかなりの個体数が遡上してきているようです。

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メスも釣れた。オスよりかなり数が少ない。

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ちなみにこのハスという魚、顎が滅茶苦茶に硬く、主上顎骨と頭蓋をつなぐ膜的な部分(?)以外にまともに針掛かりしません。そのため当たりがあってもフッキングするのは1/3ほど。さらに口で弾いた後、身体に掛かるためかスレ掛かりが多く、口にまともに掛かってくるのはそのさらに1/2くらいでしょうか?それでも超高活性でほぼ毎回当たりがあるので入れ食いみたいに釣れます。


2人で思う存分腕が痛くなるまでハスを釣って楽しんだ後は夜の部。湖北まで移動してR君が持ってきてくれた郡上鮎(ブランド)などを炭火で焼き(滅茶苦茶うまかった)、腹ごしらえをした後はイワトコ&ビワコオオナマズチャレンジです。僕は水中撮影で、R君はぶっこみ釣りで狙います。
ドライスーツを着て潜ると覚悟はしていましたがなかなかの濁り。深い場所へ潜るのはさすがに怖いのでほどほどにして、水深2、3mあたりでナマズを探します。大きな魚はほとんどがオオクチバスでたまにニゴイが見られるくらい。これはダメかも…と思った矢先に鈍い金色を帯びた魚体が視界に入ります。

 

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イワトコナマズ Silurus lithophilus

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イワトコナマズです。感動する間もなく瞬時に身をひるがえして夜の湖の闇に消えてしまいました。とりあえずナマズがいることはわかったので、少しやる気になり、岸沿いに300mほど泳いで広く探してみるとほかに3個体を見ることができました。それでも100mにつき1個体の密度なのでなかなか厳しいものが…さらに濁りがきついせいでこちらが気づくよりもずっと前にこちらの存在に気付いており、警戒して寄せてくれない感じです。結局今回、納得のいくいい写真は一枚も撮れませんでした。

失意の中水から上がり、釣りをしてるR君と合流。彼も当たりは全くなしとのことで、この日はナマズを狙うにははずれの日だったようです。0時を回ったところですが、R君がまだ釣りを続けると言うので少し場所を移動し仕切り直します。

しかし、ここで僕は眠たさの限界を超えダウン。徹夜で頑張るR君を尻目にテントで就寝することに…(クズ)。頑張ってイワトコを釣ってくれ~まぁ今夜は無理だろうけど!

雲が晴れ、満月に照らされた琵琶湖は幻想的な光景をつくりだし、夜の心地よい風は眠りへと誘います…明日の成果を夢見て…(後編に続く)