Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

5月5日熊野川水系で水中撮影

いい加減自粛警察に怒られそうですが、このゴールデンウィーク、ほぼ毎日のようにフィールドへ遊びに出かけております。出向くのは近場の熊野川や古座川の中流域から上流域が中心。この日は以前から気になっていた熊野川水系の某支流へ。

 

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山道を車で走り、入川道から河原に降りるとまたまた、息をのむほどに美しい水の流れが。川底まで見通せる抜群の透明度です。

早速ドライスーツを着て潜ってみると、水はとびきりに綺麗ですが、魚の姿は残念ながらほとんどなし。まさに“水清ければ魚棲まず”だな…と思いつつ、上流へ遡行し、出会う淵、出会う淵に潜っていくと。

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アユ 熊野川水系 -1.5m

ご覧のとおりのアユの大群が出迎えてくれました。どうやら魚が多い淵とそうでない淵があるようです。これには底質が関係しているようで、砂が多い淵には魚が少なく、大きな石が多い淵には魚が多いように感じられました。なるほど確かに餌場や隠れ家として大きな石がゴロゴロしている方が魚たちにとって都合が良いのでしょう。

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オオヨシノボリ 熊野川水系 -0.5m

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オオヨシノボリ 熊野川水系 -1.5m

ヨシノボリの仲間はオオヨシノボリとカワヨシノボリを観察することができました。カワヨシはまぁどこでも見ますが、オオヨシは久々に見た気がします。本種は水量の豊かな大河川の中上流域に多く生息するヨシノボリで、流れの速い礫環境を好みます。和歌山県内ではそうした環境は河川改修等の影響により減少しており、本種は県のレッドデータブックで準絶滅危惧種に選定されています(そこまで希少かと言われるとそうでもない気も)。オスの背鰭、臀鰭、尾鰭は美しい白に縁取られ、遠くからでもよく目立ちます。その名の通り大型のカッコいいヨシノボリです。

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ボウズハゼ 熊野川水系 -1.0m

そのほかに今回出会えた魚はアマゴ、カワムツ、オイカワ、ウグイ、タカハヤ、ヌマチチブ、ボウズハゼでした。前回の記事の時とほぼ一緒じゃね?とか言っちゃダメ。

 

両生類ではアカハライモリとツチガエルの2種を確認。ハペど素人なのですが、これツチガエルで合ってますよね?

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アカハライモリ 熊野川水系 -0.5m

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ツチガエル 熊野川水系 -0.5m

撮影に関して、以前は水中ストロボでのライティングはすべてTTL自動調光に頼っていたのですが、最近はマニュアル発光も織り交ぜて撮影するようにしてみています。TTL自動調光は難しい設定なしでストロボが被写体の明るさを検知し、自動で光量を調節してくれる便利な機能ですが、僕の使用しているE-M1 markⅡとの組み合わせですと、特にワイド撮影において光量不足となるケースが多く見受けられました。この場合、カメラ本体のスレーブ元のストロボを+1.0EV程度調光補正してやれば適正露出になるのですが、そうすると①カメラ本体のストロボのリサイクルタイムが長くなり連写ができない、②カメラのバッテリーの減りが速くなる、という問題が発生し悩んでいました。特に①の連写ができないというのはシャッターチャンスが一瞬の群れのシーンなどでは致命的で何かいい方法がないものかとやきもきしていました。
そこでネットの海で様々な記事を参考にした結果、思い切って自動調光に頼るのはやめて、マニュアル発光で撮影してみることにしました。マニュアルですと不意のシャッターチャンスには弱いですが、イメージ通りの光量に調節できること、カメラ本体のストロボはトリガーとして働くだけなので、最小光量に設定しておけばガンガン連写できることが強みです。まだ不慣れなため思い通りにライティングするのは難しいですが、上のアユの写真なんかはマニュアルで連写しなければ撮れなかったんじゃないかと思います。

 また、マニュアルで撮ることによって水中写真では大切になってくる自然光とストロボ光の織り交ぜ方や、露出の三要素(絞り。シャッタースピードISO感度)と写りの関係を改めて考えさせられ、勉強になります。センスのある人ならあまり悩むこともなく、感性だけでいい写真を切り取っていくのでしょうが、僕にはセンスは無いので、設定等、色々考えて撮影することが多いです。でもこの悩み、試行錯誤する過程が楽しい。露出、自然光の加減、ストロボの光量、構図、被写体との距離感、etc…無限に存在する要素を組み立て、シャッターを切る一瞬に落とし込んでいく…その一連の作業は写真を撮るという行為を好きになった原点だと思います。初心忘るべからずと言いますが、改めてそのことを思い出させてくれた撮影になりました。

 

撮影機材
camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6, M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, YS-01