Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

チャイロマルハタ

チャイロマルハタ 紀伊半島南部河川 -1.5m

汽水域に出現するハタの仲間は数種類が知られていますが、その中でも代表的なものが本種、チャイロマルハタです。
本種は最大で体長1 mを超える大型のハタで、東南アジアや中華圏では養殖も行われる水産重要種です。成魚は熱帯・亜熱帯域の岩礁域やサンゴ礁に生息しますが、しばしばマングローブ林などの汽水域にも侵入し、特に未成魚でその傾向が強いようです。
筆者も紀伊半島南部の汽水域でたびたび本種の姿を目撃していましたが、ハタの仲間らしく、好奇心がありながらも警戒心が強い種のようで、潜っていると遠巻きにこちらを見てくるのですが、カメラを向けるとサッと隠れるか逃げてしまうため、なかなか撮影できずにいた魚のひとつでした。
先日の汽水域での撮影の際も神経質な個体ばかりでしたが、一方で個体数自体は多かったため撮影のチャンスは少なくなく、ようやく全身を鮮明に写した写真を写すことができました。

本種は近縁のヤイトハタとよく似ていますが、体側に散らばる斑点は赤褐色で瞳孔大であること(vs. 黒色で瞳孔より小さい)、体側に白いまだら模様がないこと(vs. に黒色斑点より大きい白いまだら模様がある)によって区別できます。なお、ヤイトハタはチャイロマルハタよりもさらに南方に偏った分布を示すようで、緒方ほか(2021)では宮崎県沿岸ではヤイトハタはチャイロマルハタよりも稀であることを示しています。

 

 

引用文献

緒方悠輝也・宇都宮伸一・和田正昭・村瀬敦宣.2021.宮崎県沿岸から得られたヤイトハタの記録.Ichthy, Natural History of Fishes of Japan, 9: 1–5.

 

camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-2000, Z-240