Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

紀伊半島の淡水魚図鑑No.7 クロホシフエダイ

クロホシフエダイ Lutjanus russellii

紀伊半島での呼び名:かわさき(志摩)、もんつき(各地)、たるみ(串本ほか)

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クロホシフエダイ 和歌山県南部河川 11月
紀伊半島南部の汽水域で魚採りをするとフエダイの仲間の幼魚がよく網に入ります。いくつかの種がみられますが、汽水域で見かける機会が多いのはクロホシフエダイ、オキフエダイ、ゴマフエダイの3種でしょう。このうちクロホシフエダイは温帯域にもよく適応した種で、日本では南日本太平洋沿岸から南西諸島にかけて広く分布します。河川に侵入するのは幼魚から亜成体までが多く、生育の場所として汽水域を一時的に利用しているようです。なお完全な淡水域まで侵入することは稀だと思います(少なくとも僕は見たことがありません。淡水への適応度は上述の3種で比較すると、ゴマフエダイ>オキフエダイ≧クロホシフエダイの順になると思っています)。
本種はその名のとおり体側上部に目立つ黒斑をもつことが特徴です。この特徴から和歌山県をはじめとする南日本の各地で”モンツキ”の別名で呼ばれています。また以前住んでいた三重県の志摩地方では何故か“カワサキ”と呼ばれていました。本種とよく似た種にニセクロホシフエダイ(そのまんまだな…)やイッテンフエダイが挙げられますが、ニセクロホシフエダイとは背鰭軟条数が13本であること(ニセクロは14本)や体側の縦線は褐色であること(ニセクロは黄色)、イッテンフエダイとは体側の黒斑が大きく、側線にかかること(イッテンは黒斑が小さく、側線にかからない)によって識別することができます。
本種はフエダイの仲間らしい食欲旺盛な肉食魚で、採集してバケツ等にキープしていると口に入る大きさの魚を食べてしまうこともしばしばです。また気の強い一面もあるため、飼育する際には混泳魚との相性に注意が必要でしょう。
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クロホシフエダイ 和歌山県南部河川産 10月