Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

クボハゼ

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クボハゼ 三重県南部河川 -1.0m

先週末は三重県南部の汽水域に今年初の水中撮影に行ってきました。といっても水の冷たいこの時期、魚は少なく川の中も閑散としていました。写真は初撮影のクボハゼ。ウキゴリ属ですが、ウキゴリやビリンゴと違いあまりホバリングをするようなことはなく、どちらかと言うと水底を離れたがりません。生息環境にシビアなハゼで泥混じりの砂地を好み、たった数メートル離れた場所であっても礫の多い場所や完全な泥底には出現しません。本種はほかのウキゴリ属と同様、メスに婚姻色が発現し、冬から初春にかけて産卵期のメスはお腹が鮮やかな黄色に染まります。写真の個体も婚姻色が出始めており、もうひと月もするとさらに美しい姿を見せてくれるのではないでしょうか。

 

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たぶん、オス個体

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

ハゼの日

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ハヤセボウズハゼ 沖縄島北部河川 -1.5m

本日、12月23日はハゼの日です!!(非公式)

なぜ今日がハゼの日かというとハゼ科魚類のご研究で著名な上皇さまの誕生日がこの日だから。今年も淡水・汽水中心に様々なハゼを撮影してきましたが、その中でも印象に残ったものの一つが沖縄島北部で撮影したこのハヤセボウズハゼ。沖縄島、西表島、台湾でのみ確認されている美しいボウズハゼの仲間で、学名のStiphodon imperiorientisの種小名はラテン語のimperator(皇帝)とorient(太陽の昇るところ)の組み合わせで、つまり「日いづるところの天子」を意味し、上皇さま(記載当時、天皇陛下)に因んだものとなっています。

本種はその和名に反し、流れの緩やかな淵に単独でいることが多いです。単独なのはそうした習性なのか、個体数が少なすぎて結果として一人ぼっちになっているのかはわかりません。ナンヨウボウズハゼ属の他種のオスと一見、よく似ていますが、本種はより大型になり、胸鰭に細かなレース模様が入ることから容易に区別できます。

 

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ハヤセボウズハゼ 沖縄島北部河川 -1.5m

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

ヒスイボウズハゼ Stiphodon alcedo

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オレンジタイプのオス

先月の20日から23日の日程で沖縄島に撮影遠征に行っていました。こんなぽっと出の遠征でこんなに成果が出て良いのだろうか…と思ってしまうぐらいに今回は運が良く。見たいと思っていた魚はすべて見ることができました。現地でサポートいただいた同行者には感謝しかありません。
写真のヒスイボウズハゼも是非見てみたいと思っていた魚で、本種は現在のところ沖縄島と西表島からのみ報告されています。本種のオスの体色はナンヨウボウズハゼと同様、オレンジタイプとブルータイプのバリエーションがあることが知られていますが、今回は両タイプを確認することができました。和名の“ヒスイ”は頭部が青色、腹部がオレンジ色という本種の体色が鳥類のカワセミ(別名および漢字表記だと“翡翠”)を連想させることに由来します。また種小名の“alcedo”もカワセミの学名(Alcedo atthis)に因むものです。
本種と同属のナンヨウボウズハゼ(沖縄の川では普通種)に比べると個体数はやはり少なかったですが、一つの淵に複数の個体がいるポイントがありそこではオス同士で盛んに縄張り争いをしていました。本種やハヤセボウズハゼニライカナイボウズハゼは現在のところ琉球列島や台湾でのみ確認されていますが、これら既知の分布域では、確認されている個体数があまりに少ないことから、実際には未知の分布の中心が東南アジアなど南方にあり、そこから海流などにより偶発的に輸送された個体が加入しているものと考えられています。いつの日か分布の中心たる本種の“楽園”になっている川に潜ってみたいものです。

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ブルータイプのオス

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

2021年ビワマスの遡上

先週あたりから遡上の情報が聞こえ始めたビワマス。居ても立っても居られず、今年こそは産卵シーンの撮影を!と意気込んでの琵琶湖入りです。しかし北部の2河川を巡ったのですがどうも昨年の同じ時期の撮影時よりも個体数がかなり少ない・・・

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産卵床を掘るメス。琵琶湖流入河川

 

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木漏れ日の中を泳ぐ立派なオス。説明不要の美しいシーン

撮影後にお話しした地元の方いわく、今年は例年であれば一斉遡上のトリガーとなるまとまった雨がまだ降らず遡上量が少ないとのことでした。そんな状況でしたが、とある流入河川にて運のいいことに産卵床を作っている最中のペアに遭遇。翌日からの2日にわたり繁殖行動の観察を続けました。残念ながら産卵の瞬間こそ撮り逃したものの、是非とも写真に収めたいと思っていた迫力のシーンを捉えることができ良かったです。
やはり大型のサケ・マスは人を惹きつける魅力がありますね。これから一雨あればさらなる遡上も期待されるところ。今シーズン中に少なくとももう一度は琵琶湖に通ってみようと思います。

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産卵床の上で定位するペア

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(陸上写真), M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
strobe:D-200, D-2000