Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

稚アユの群れ

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稚アユの群れ 銚子川 -4.0m

三重県銚子川で撮影した遡上してきたばかりの稚アユの群れです。大きさは3~4cmほどで、まだ身体が半透明な個体も混じります。先日、別の川に稚アユ狙いで撮影に行ったところ、ほとんど遡上がないような状況だったので、今年は遡上量が少ないのではないかと心配していたのですが、少なくとも銚子川ではそんなこともなさそうでひとまずは安心です。
撮影地は潮の影響を受ける深い淵で最深部は5mを超えます。今年は雨が少なく川の水を押し流す力が弱いせいか、淵の底には銚子川らしからぬ白濁りした塩水が溜まっていました。そうした濁った水の中で撮っても写真としての美しさには欠けるため、川底で待機しアユの群れが透明度の高い淡水側に抜ける瞬間を狙ってシャッターを切っています。

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陽光のもとを泳ぐ 銚子川 -3.0m

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
strobe:D-200, D-2000

SEA&SEA製光ケーブルをINON仕様に改造する

カメラのシャッターに同調して発光することで、被写体を照らしてくれる外部ストロボは本格的な水中撮影のマストアイテム。僕もINON社D200を愛用しています。外部ストロボを使うためにはハウジングとの間を光ファイバーケーブルで接続して、カメラ本体のストロボに同調させてやる必要があるのですが、この光ケーブル、水中撮影機材あるあるでしょうもない小物のくせに地味に高いんですよね。

1本、7300円。なお、ストロボは大抵2灯使うので、その場合ケーブル代だけで15000円近くします。

www.amazon.co.jp

まぁ高くてもそうそう買い換えるものでもない、というのであればこの値段にも納得できるのですが、やはりフィールドの中で使うものですからトラブルはつきもの。僕も先日のアマゴの撮影の際にやらかしてしまいました。

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見ろよこれ、この無残な姿をよぉ

実は以前に全く同じケーブルを一度切断しているのですが、場所が先端に近かったので切り詰めて使っていたんですよね。2度目だぞ、おい。まぁ細いケーブルですから扱いが悪いと折れてしまったり、経年劣化もあるでしょう。ともかく今回はほぼ真ん中で切断ということで、こうなってしまってはさすがに修理は不可能です。いやーこれ近場のフィールドだからまだ許せますけど、遠征で同じことやらかしたらガチギレ案件ですからね(その後の撮影が全部詰む)。そうならないためにもケーブルの予備は必須だな、と痛感した限りです。

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どうしようもない。

さて、また新たにAmazonで注文しても良かったのですが、実は家に使っていないケーブルが転がっていたのを思い出しました。それがこちら。

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???先端のソケットの形が違う!?それもそのはず、実はこちらはINONと双璧をなす(?)水中ストロボメーカー、SEA&SEA社製のケーブルなのです。INONの方は片方がねじ込み式になっているのに対し、SEA&SEAの方は両方ともプッシュ式です。実は以前はSEA&SEAのストロボを使っていたので、こんなものが家に転がっていたのですね。ちなみにこの仕様のせいでSEA&SEAのケーブルをINONのストロボに使うこともその逆もできません。2つしかメーカーが無いのに互換性が無いとはどうかしてるぜ!

今後SEA&SEAのストロボを使うことは無いと思われるので、このケーブルをINON仕様に改造することにしましょう。

改造と言っても大したことではなく、切断したINONケーブルのソケットをSEA&SEAのケーブルに移植するだけです。まずはSEA&SEAのケーブルのソケットをカッターを使って外していきましょう。ケーブル本体を傷つけないよう、慎重にソケットの根本に切れ込みを入れ、ケーブルを強く引っ張ると案外簡単に引っこ抜けます。

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引っこ抜けたらゴム製の鞘のようなものがケーブルに付着してるので、これも丁寧に剥がしていきます。

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次に切断したINONのケーブルのソケットを外します。精密ドライバーでネジを外すだけで簡単に分解できます。

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そしてSEA&SEAのケーブルの方に移植して分解したのと逆の手順で組み立てるだけ。

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はい、簡単ですね。所要時間5分。この後発光テストしたらちゃんと光ったので、問題なく光接続できているようです。SEA&SEAからINONに乗り換えた僕のような人でない限り、両方のケーブルを持っているという方はなかなか少ないとは思いますが、持ってるよ!という方はケーブルを切ってしまった時に試してみるといいかもしれません。

古座川水系、アマゴの稚魚

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アマゴ稚魚 古座川水系 -0.5m

撮影のネタが少ない冬の時期ですが、そろそろアマゴの稚魚の姿が見られる頃ではないかと思い、和歌山県南部を流れる古座川のとある支流を見てきました。昨年の3月末にも同じ場所を訪れており、およそ1か月早い現地入りです。
上流域ということもあり、水温は8℃。ドライスーツの下にフリースを着込んでも寒さを感じる冷たさです。水の中も魚の姿はほとんどありませんでしたが、アマゴの稚魚は少ないながらも流れの緩いワンドのようになっている場所で群れているのを確認しました。まだ全長3cmほどで泳ぎ方もまだ頼りない感じ。昨年は3月末で5cmほどにはなっていたので、この1か月で急成長するみたいですね。とりあえず今年も自然繁殖は継続できているようで一安心です。

 

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冬の渓流。今年は生息環境写真も撮りためていきたい。

camera : E-M1 markⅡ
lens :M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000

紀伊半島の淡水魚図鑑No.25 オオヨシノボリ

オオヨシノボリ Rhinogobius fluviatilis

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河川中流域から上流域の急流部に生息するヨシノボリの仲間。その名のとおり日本産のヨシノボリの中ではルリヨシノボリやヒラヨシノボリと並び大型に成長する種で、大きな個体では全長10cmを超える。本種に限らずヨシノボリの仲間は互いによく似ているが、本種は胸鰭基部に楕円形の黒斑をもつこと、尾鰭基底に黒色横斑をもつこと他のヨシノボリから識別される。特に胸鰭基部の模様は未成魚でも明瞭であり、見慣れれば同定は容易。成熟したオスは背鰭、臀鰭および尾鰭が美しい青白色に縁どられ、大型に成長することもあり、遠目にもよく目立つ。

本種は水量の豊富な大規模な河川を好み、同じような環境を好むルリヨシノボリとは同所的にみられることもあるが、本種のほうがやや上流に偏って生息する。同じ河川内でも砂礫底のような単調な環境の場所には少なく、巨岩や岩盤で構成されるような変化に富んだ環境を好むように思う。紀伊半島では中流域の発達した清流が多いこともあり、見かける機会も少なくないが、和歌山県ではダム建設に伴う生息域の分断や河川環境の変化により生息数は減少傾向にあるとされ、県レッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている(和歌山県編,2012)。

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メス。黄色味が強いが、胸鰭基部と尾鰭基底の模様はオスと同様。熊野川水系

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幼魚、巨岩の上に多数の個体が群れていた。 古座川水系

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石の上で休むオス

camera : E-M1 markⅡ
lens :M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro, M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm Fisheye PRO
strobe:D-200, D-2000

 

引用文献

和歌山県編.2012.5 淡水魚類.保全上重要なわかやまの自然-和歌山県レッドデータブック-[2012年改訂版].81–106.p444.和歌山県環境生活部環境政策局環境生活総務課自然環境室.和歌山県