Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

砕波帯の稚アユ

アユ 和歌山県南部 -1.0m

今年1発目の水中撮影は海からスタートです。

両側回遊魚であるアユは仔~稚魚期のうちは海洋生活を送りますが、海のどこにでもいるわけではなく、多くは砕波帯(サーフ・ゾーン)と呼ばれる水深の浅い、波が打ちつけるような砂浜域に生息します。

これまで川でのアユの姿は幾度となく撮影してきましたが、海での彼らの姿は水中からは見たこともなく、長らく撮影してみたいと思っていた被写体でした。

今回はあらかじめ目星をつけていた和歌山県南部の砂浜海岸にエントリーしたのですが、はじめのうちはなかなかアユが見つかりません。どこにいるのかと広い砂浜を探すこと約30分、ようやく小規模ながら稚アユの群れを見つけました。観察していると、思っていた以上に水深の浅い場所を好んで泳いでいるようで、時に水深30cmもないような波打ち際ぎりぎりの場所でも見かけました。ここまで浅い場所ですと波の影響で海底から砂が舞って視界が悪くなりその姿を視認することは容易ではありません。これは稚アユ自身の身体が透明なことも相まって捕食者に対する効果的なカモフラージュとして機能しているようでした。一見過酷なように思える、波が激しく打ちつける砕波帯の生活ですが、捕食者の目から逃れるという意味ではうってつけの場所なのかもしれません。

このように稚アユたちにとっては身を隠すのに好都合な砕波帯なのですが、撮影環境としては言うまでもなく厳しい場所でした。何しろ舞い上がる砂でアユの姿も見えにくくなる上、波浪でこちらも揺さぶられ撮影位置が安定しないのですから。そこでアユの群れに張り付いて、波の影響を受けづらい水深の深い場所(といっても水深1m前後ですが)に出てきたときにシャッターを切るようにしました。前述のとおりまだ小さいアユの身体は透明なため普通に撮影したのでは写らないため、かなり強めにフラッシュを焚いています。

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
strobe:D-200, D-2000