Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

琵琶湖のシロヒレタビラ

シロヒレタビラ♂ 琵琶湖 -0.5m

琵琶湖の湖岸で撮影したシロヒレタビラです。

琵琶湖周辺にはかつて7種のタナゴの仲間*1が生息していたとされていますが(金尾・松田2012)、その中でもとりわけ本種の個体数は多かったようで、明治期に採集された標本の調査からかつては全湖的に大量に生息する普通種だったことが明らかになっています(川瀬ほか2023)。

そうした本種の生息状況は戦後しばらく―少なくとも1960年代ごろまで変わらなかったようですが、70年代以降の開発による湖岸環境の悪化、産卵母貝の減少、魚食性外来魚であるオオクチバスの侵入と急増などの影響により、個体数は急速に少なくなり、1995年以降、湖内からは全く採集されないほどにまで減少してしまいました。その後長らく採集記録は途絶えたままだったのですが、2008年にエリ漁で複数個体が採集されたのを皮切りに個体数が回復傾向にあり(川瀬・藤田2009)、2025年現在では湖岸でシロヒレタビラ釣りを楽しむ人の姿が見られるまで増えています。琵琶湖では2002年ごろから外来魚駆除の取り組みを強化しており、実際に外来魚の生息数は大きく減少していますが、川瀬・藤田(2009)では琵琶湖のシロヒレタビラの個体数の回復は外来魚駆除の効果が出始めたものではないかと考察しています。

というわけで本種の個体数は琵琶湖では増加傾向にあり、暗いニュースの多い淡水魚界において珍しい明るい話題となっています。とはいえ昔のように琵琶湖のどこでも見られるという生息状況にはまだまだ至っておらず、外来魚駆除をはじめ琵琶湖本来の生態系を再生させる取り組みをこれからも継続する必要がありそうです。

シロヒレタビラ♀ 琵琶湖 -0.5m

 

引用文献

金尾滋史・松田征也.2012.琵琶湖のタナゴ類:その現状と保全.魚類学雑誌,59: 75–78

川瀬成吾・藤田朝彦.2009.琵琶湖におけるシロヒレタビラの生息確認.伊豆沼・内沼研究報告,3: 19–24

川瀬成吾・中江雅典・篠原現人.2023.石川千代松が収集した魚類標本から見る明治中期の琵琶湖の魚類相.魚類学雑誌,70: 147–160

 

camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
strobe:D-200, D-2000

*1:ヤリタナゴ、アブラボテ、カネヒラ、イチモンジタナゴ、シロヒレタビラ、イタセンパラおよびニッポンバラタナゴの7種