Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

秋の南紀の汽水域

9月に入って以降、秋雨前線による長雨で川に入れず、コンディションの良い日は予定があったり遠征があったりでなかなか撮影できない日々が続いておりました。

というわけで先週末はおよそ1か月ぶりの地元のフィールドでの撮影となりました。訪れたのはこのブログでも何度か取り上げている和歌山県南部の小河川の汽水域。秋と言えば汽水域が一番面白くなるシーズンで、1年のうちで最も多くの種類の魚を見られる時期です。特に黒潮の影響を強く受ける紀伊半島南部では死滅回遊による南方系の珍しい魚が見られる可能性が高くなります。

今回は今まで何度か目撃していたものの、実は写真を撮っていなかった魚(オキフエダイとか)もいたので、そうした魚を手堅く収めつつ。初見の珍しい魚も探すというスタイルで撮影してみることにしました。

潜ってみるとやや濁っているものの、撮影できないほどの透明度ではありません。毎回のことですが、汽水域は透明度の予想が難しい・・・今回は潮止まり~上げ潮のタイミングで入ったのですが、序盤はまだ撮影できる透明度でしたが、後半は濁った海の潮が入り撮影どころではなくなってしまいました。というわけで以下今回出会った魚たちを紹介していきます。

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スミゾメスズメダイ 和歌山県南部河川 -1.5m

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スミゾメスズメダイ 和歌山県南部河川 -1.5m

その鮮烈な青の輝きでよく目立っていたのはスミゾメスズメダイの幼魚。汽水域や内湾など泥底環境を好むスズメダイで、琉球列島では普通種ですが紀伊半島で見られるのは珍しいかと。実は昨年別の場所で目撃していたのですが、撮り(採り)逃していた魚でした。

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ハタタテダイ 和歌山県南部河川 -1.0m

ハタタテダイは南紀では普通種で、漁港などでもよく見かけますが、実は汽水域にもよく出現する魚だということは意外と知られていないかもしれません。今回は写真のような小さな個体からやや成長した個体まで複数個体を確認しました。

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スジモヨウフグ 和歌山県南部河川 ー1.0m

このスジモヨウフグも同属のサザナミフグなどと同様、汽水域にしばしば侵入する種です。採集したことはあるのですが、水中撮影するのは初。これも嬉しい収穫となりました。

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オキフエダイ 和歌山県南部河川 -2.0m

個体数が多すぎていつでも撮れると思っていたからか、今まで真面目に撮影してこなかったオキフエダイ。申し訳ない…今年はフエダイの当たり年なのかどの種も個体数が多いです。今回もオキフエ、ゴマフエ、クロホシフエダイの3種に加え、ニセクロホシフエダイ、イッテンフエダイ、ナミフエダイを新たに目撃しました。また写真を撮りに行かねば…

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ゴマアイゴ 和歌山県南部河川 -1.5m

今回一番驚いたのはこのゴマアイゴ。沖縄ではカーエーと呼ばれ、食用としても釣りの対象としてもなじみ深い魚ですが、内地ではほとんど採集記録がありません。

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ゴンズイ 和歌山県南部河川 -1.0m

ゴンズイも今まで幾度となく見てきた魚ですが、まともに撮ったのは今回が初めて。海水魚のイメージが強いですが、成魚、幼魚問わず、汽水域にもよく出現します。写真の大きさぐらいの幼魚は群れになっていることが多いですが、この個体は一匹で定位していました。

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ギンガメアジの群れ 和歌山県南部河川 -1.5m

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ロウニンアジ 和歌山県南部河川 -1.5m

 

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カスミアジ 和歌山県南部河川 -1.5m

ギンガメアジ属の仲間ではギンガメ、ロウニン、カスミの3種を撮影。カスミアジは判り辛いですが、わずかに胸鰭が黄色いのと、写真には写っていませんが、角度によっては背中が青く輝いていたので、恐らくそうかと。本属のよく見かける種ではオニヒラアジを撮影できていないのでまた狙っていきたいですね。

 

秋らしく、多種多様な魚たちを観察することができ楽しい撮影となりました。出会える魚の種類が多いのはそれだけで楽しく、また何が出てくるかわからないわくわく感はこの時期の汽水域ならではのものだと思います。南紀では海水温が高いので、他の地域よりも少し長く、12月ごろまでは汽水域を楽しめると思います。今年の秋はなんだかんだで忙しそうで、汽水ばかりに注力はできなさそうですが、その合間を縫ってでも定期的に足を運んで記録していきたいですね。

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000