Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

カネヒラの秋

秋といえばカネヒラの婚姻色ということで、琵琶湖へ撮影に行ってきました。筆者の住んでいる紀南からもっとも近い本種の安定した生息地は伊勢湾流入河川および濃尾平野なのですが、この地域のカネヒラは移入分布であることが示されているため(北村・内山,2020;Miyake et al., 2021)、どうせなら在来の個体群を見たい!ということで琵琶湖への遠征です(実は紀伊半島でも紀の川水系に自然分布するようですが、近年は生息情報が途絶えているようです…)。
この時期のカネヒラはやはり産卵を意識しており、普段湖内で生活している個体も接岸したり、流入河川や水路に遡上して産卵するようです。今回は湖岸で2か所探してカネヒラの姿が全くみられず空振りした後に、湖につながる水路でようやく群れを見つけることができました。

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カネヒラのメス 琵琶湖流入水路 -0.7m


タナゴの仲間は警戒心の強い種が多いのですが、本種も例に漏れずかなり臆病で、遠くでヒラを打って採餌している姿は見えるのですが、そこへ寄って行ってもすぐに逃げられてしまいます。また音にも敏感でシュノーケルクリアの音にも驚いてしまいます。それでも1時間以上じっとして撮影者の存在に慣らすとこちらを危険な相手ではないと認識したのか、次第に向こうから寄ってくるようになり、目の前で採餌するまでになりました。

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カネヒラ 琵琶湖流入水路 -0.7m

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水草の間を泳ぐ

 

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反転した瞬間

本種はタナゴの中でも植物食性が強く、オオカナダモヒルムシロの仲間をついばむようにして食べていました。オスの婚姻色はすばらしく、ピンクに色づいた鰭は遠くからでもよく目立ちます。今回のポイントには産卵母貝がないのか、餌を食べるばかりで繁殖に関係した行動(オス同士の闘争、貝覗き、産卵など)はみられなかったので、次の撮影時はそういったシーンも狙ってみたいと思います。

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産卵管の伸びたメス。本種は水草をよく食べる

 

camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
strobe:D-200, D-2000

 

引用文献

北村淳一・内山りゅう.2020.日本のタナゴ 生態・保全・文化と図鑑.p224.山と渓谷社,東京都.

Miyake, T., Nakajima, J., Umemura, K., Onikura, N., Ueda, T., Smith, C., Kawamura, K. 2021. Genetic diversification of the Kanehira bitterling Acheilognathus rhombeus inferred from mitochondrial DNA, with comments on the phylogenetic relationship with its sister species Acheilognathus barbatulus. Journal of Fish Biology.