
九州北部はスジシマドジョウ類が4種*1も生息する国内でも屈指の多様性を誇る地域です。その中で本種、アリアケスジシマドジョウはその名のとおり有明海にそそぐ川にのみ生息する固有種のスジシマドジョウですが、有明海周辺の河川には九州最大の河川である筑後川水系が含まれることから、その分布域は福岡、佐賀、熊本および大分の4県に跨り、九州の4種のスジシマたちの中でもっとも広域に分布する種とされています。
ムツゴロウ撮影のために訪れた有明海でしたが、潮の干満の関係で満潮時は干潟で撮影ができず暇になってしまいます。そこで、せっかく本種の生息地の近くに来たこともありますし、撮影できそうな場所を探してみることにしました。
スジシマドジョウ類と言えば河川下流域の砂泥底やそこに連なる流れのゆるやかな水路などが典型的なハビタットです。加えて、産卵は増水時に冠水した湿地のような場所で行うこともあり、岸際の植生が豊かで自然度の高い場所を好む印象があります。
佐賀平野のクリーク地帯を車で走っていると、まさに上記のような自然度の高い素晴らしい水路を発見!「絶対ここならいるだろう~」と思ってカメラを持って潜ってみるとすぐに答えは出ました。


一見泥深そうな水路でしたが、水はそこそこ澄んでおり、たくさんのアリアケスジシマドジョウたちが群れているのが観察できました。オスは婚姻色である体の縦縞が濃く、メスは抱卵でお腹が黄色くなっており、まさに産卵期真っただ中という様子。メスに多数のオス個体が追尾する行動も観察できました。
この水路にはぱっと見る限り、本種のほかにカゼトゲタナゴ、バラタナゴ、アブラボテ、オイカワ、イトモロコ、カワバタモロコ、モツゴ、トウヨシノボリ、ドンコが生息しており、魚種も豊富で素晴らしい環境でした。
かつての九州北部のクリーク地帯はこうした雑魚たちの楽園であり、どこの水路にも沸くようにタナゴやドジョウ、モロコがいました。雑魚たちはときに食用としても利用されており、アリアケスジシマドジョウも「かたびらどじょう」と呼ばれ、卵とじや醤油煮で食べる文化があったそうです(中島・内山,2017)。
引用文献
中島 淳・内山りゅう.2017.日本のドジョウ 形態・生態・文化と図鑑.山と渓谷社,東京.223 pp.
camera : OM-1
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000