ヒナハゼ Redigobius bikolanus
河川下流域から汽水域に生息する全長3㎝ほどの小型のハゼ、東京湾以西の本州から南西諸島までの広い分布域をもち、紀伊半島でもほぼ全域でその姿を見ることができる。生息環境としては流れの緩い礫交じりの砂底や岩礁、カキ殻帯などを好む。成熟したオスは第一背鰭が伸長し、また口が大きく裂けた小さな身体に見合わぬいかつい顔だちになる(だがそれがいい)。
日本国内では同属他種としてタスキヒナハゼ Redigobius balteatusの分布が知られるが、現在のところ西表島から報告されているのみであり、日本の多くの場所で見られるヒナハゼ属魚類は本種のみである。日本国内では他に似た雰囲気の魚はおらず、見間違えることは無いだろう。繁殖期は5月から8月にかけてであり(石川・河野,2018)、この時期にはオスがメスに盛んにアピールする様子を観察できる。ハゼの仲間としては珍しく温和で、飼育もしやすいことからアクアリウムルートでの流通もみられ、淡水で飼育されることも多い本種だが、自然下では純淡水域ではあまりみられず、生息の中心はもっぱら汽水域であることから、本来の生息環境を再現し飼育するには塩分を加えたほうが良いだろう。
camera : E-M1 markⅡ
lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000
引用文献
石川新・河野博.2018.ヒナハゼは東京湾奥部で産卵する.東京海洋大学研究報告.14.58–64