Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

紀伊半島の淡水魚図鑑No. 11 ヒナハゼ

ヒナハゼ Redigobius bikolanus

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ヒナハゼ 和歌山県南部河川 -1.0m

河川下流域から汽水域に生息する全長3㎝ほどの小型のハゼ、東京湾以西の本州から南西諸島までの広い分布域をもち、紀伊半島でもほぼ全域でその姿を見ることができる。生息環境としては流れの緩い礫交じりの砂底や岩礁、カキ殻帯などを好む。成熟したオスは第一背鰭が伸長し、また口が大きく裂けた小さな身体に見合わぬいかつい顔だちになる(だがそれがいい)。

日本国内では同属他種としてタスキヒナハゼ Redigobius balteatusの分布が知られるが、現在のところ西表島から報告されているのみであり、日本の多くの場所で見られるヒナハゼ属魚類は本種のみである。日本国内では他に似た雰囲気の魚はおらず、見間違えることは無いだろう。繁殖期は5月から8月にかけてであり(石川・河野,2018)、この時期にはオスがメスに盛んにアピールする様子を観察できる。ハゼの仲間としては珍しく温和で、飼育もしやすいことからアクアリウムルートでの流通もみられ、淡水で飼育されることも多い本種だが、自然下では純淡水域ではあまりみられず、生息の中心はもっぱら汽水域であることから、本来の生息環境を再現し飼育するには塩分を加えたほうが良いだろう。

 

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繁殖期、オスは鰭を全開にしてメスにアピールする。和歌山県南部河川6月

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オスの口は大きく、上顎骨の後端は眼の後縁を越える。

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メスの口は小さい。ハゼは皆そうだが、眼の輝きが美しい。

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和歌山県南部河川産 27mmSL

camera : E-M1 markⅡ

lens : M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro

strobe:D-200, D-2000

 

引用文献

石川新・河野博.2018.ヒナハゼは東京湾奥部で産卵する.東京海洋大学研究報告.14.58–64