Fishes of Kii Peninsula

紀伊半島のさかな

琵琶湖遠征記(後編)

 前回のつづきです。

AM5:00。R君に起こされ起床。イワトコナマズは釣れたかと訊くと案の定、一度だけ何らかの当たりがあったものの掛けられず、何も釣れずとのこと。R君はナマズが釣れなかったショックと寝不足とカフェインとニコチンの摂りすぎで完全に精神が死んでおり、とりあえず寝て回復してもらうことに。僕はその間琵琶湖に棲む2種類のヨシノボリ、ビワヨシノボリとトウヨシノボリ(オウミヨシノボリ)の撮影ポイントで潜ります。そのポイントには以前5月に行ったことがあり、その時はビワヨシもトウヨシも見られたのですが、今回はどうでしょうか?

潜ってみるとたくさんのビワヨシとトウヨシ。しかも両種ともにかなりの個体数がいます。ビワヨシノボリがやや深場の水深2~3mほどの水草が生えている場所に、トウヨシノボリが岸際の礫がごろごろしている場所にそれぞれ棲み分けているようです。ちなみにビワヨシが接岸してきているのは繁殖期の初夏から夏にかけてのみであり、それ以外の時期はやや沖合を回遊していると言われています。いつかその姿も見てみたい!一方トウヨシは琵琶湖の湖岸や流入河川で一生を過ごすようですね。

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ビワヨシノボリ(オス)琵琶湖 ー3.0m

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ビワヨシノボリ(メス)琵琶湖 -3.0m

 

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トウヨシノボリ(オウミヨシノボリ)琵琶湖 -0.5m

両種は性格も異なっており、ビワヨシノボリがやや臆病であまり近寄らせてくれないのに対し、トウヨシノボリは警戒心が薄く、撮影していると興味深そうにこちらに寄ってくることもあります。またビワヨシのオスは同種のオスに対して割と寛容なのに対し、トウヨシは喧嘩っ早く、縄張りを持っているオスは他のオスが近づくとすぐに鰭を全開にして臨戦態勢に入ります。

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ビワヨシノボリ 琵琶湖 -3.0m

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トウヨシノボリ(オウミヨシノボリ)琵琶湖 -0.5m

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トウヨシノボリ(オウミヨシノボリ)琵琶湖 -0.5m

 2時間ほど潜ったところで撮影終了。この時期にドライスーツで潜っていてもほとんど動かずに湖底に張り付くようにして撮影しているとさすがに少し身体が冷えますね…

R君も車で寝て回復したので、次のポイントへ。湖西地方の某水路帯へ昨日は採集できなかったビワコガタスジシマドジョウを狙いに行きます。といってもピンポイントで採れる場所を知っているというわけではなく、Googleマップの航空地図で探して
おっ、この水路なんかエモそうじゃな~い?と適当にあたりをつけて行ってみるという非常にゆるい感じです。

 

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少し車を走らせ目的の水路に到着。昔ながらの素掘りの水路で岸際の植生もいい感じです。うーん、エモーショナル!素晴らしい。

しかし、さっそく網を入れてはみたものの、ここで採れるのは普通のドジョウとフナ属(ギンブナ?)のみ。スジシマが生息するには少し底の泥の要素が強いようです。

そこですぐ近くの別の水路に歩いて移動、そこはコンクリ2面護岸で自然度は下がるものの、底は砂泥でスジシマが好みそうな感じです。網を入れてみるとビワヨシノボリ、トウヨシノボリ、ウキゴリ、カワムツ、そしてオオガタスジシマドジョウが採れますが、一見してこれはビワコガタ!という個体は採れず。下の写真のような極小個体は採れましたが、オオガタの幼魚かな・・・?

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オオガタスジシマドジョウCobits magnostriata?

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ちなみにこの水路はイシガイ類が多く、タモで底を浚うとザクザク採れました。上の写真の左はササノハガイで間違いないでしょうが、右はカタハガイ?貝の種類が全く分からないので誰か詳しい人に教えてほしい・・・

※追記:Twitterでみなたびさん(@Minamiakahire)にタテボシガイだと教えていただきました!(圧倒的感謝)

ちなみに貝はたくさんいるのにタナゴ類は全く採集できませんでした。環境的には悪くない感じでしたが…

 

水路採集で癒された後はさらなる癒しを求め前日も行ったハスの川へ。相変わらずの密度でミノーを投げるとすぐに掛かってきます。何度見ても惚れ惚れする造形ですね。美しい。

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臀鰭の造形は特に美しい

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ニゴイも釣れました

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ハス 琵琶湖流入河川 -1.0m

この日は濁りが多少収まっていたので、生態写真にもチャレンジしてみましたが、増水しているためか流れが速く、身体を固定して撮影するのは難しい状況。なんとか踏ん張ろうとしても少しずつ下流に流されてしまいます(ちなみにR君いわく岐阜の郡上だったらこんなのはチャラ瀬にも入らんとのこと。郡上どんだけ激流なんだ・・・・)。さらにハスは警戒心がかなり強く(ルアーにはガンガン食ってくるくせに…)、全く近寄らせてくれません。そこで流れにドリフトしながら、すれ違う一瞬を狙って撮影してみることに。しかし本当にチャンスは一瞬なので、見切れ写真を量産しただけで、辛うじて見られるかな…というのが上の一枚という結果でした。この川は釣りには最高ですが、流れが速すぎるので撮影はもう少し流れの緩やかな川の淵とかでチャレンジしたいですね。

そんなこんなで遊んでいたらもう夕方3時過ぎ。まだまだ遊び足りないところですが、帰りも4時間運転しないといけないのでここでタイムアップとしました。結局2日目の後半は前日と同じようなことしかしていなかった気もしますが大いに楽しめました。雨続きの中、決して良いとは言えない状況でしたが、それでもこれだけ多くの魚たちに出会えたのは琵琶湖というフィールドのポテンシャルの高さゆえだと思います。今回遊んだのはこの日本一の湖のほんの一角。まだまだ行くべき場所、出会うべき魚には枚挙に暇がありません。また、今回は残念な結果に終わったビワコオオナマズとイワトコナマズの撮影はぜひ再チャレンジしたいところです。近いうちの再訪を誓い偉大なるマザーレイク、琵琶湖を後にしました。