オオウナギ Anguilla marmorata
紀伊半島での呼び名:おおうなぎ、いもうなぎ、かにくい(紀伊半島南部)
最大2mに達するとされる巨大なウナギ。ニホンウナギと比較して分布は南に偏り、国内でも琉球列島などでは本種の方が個体数が多い。黄褐色と黒のまだら模様をもつこと、背鰭の開始位置は胸鰭後端と肛門の中間点より前方に位置することにより同属のニホンウナギやニューギニアウナギとの区別は容易。肉食で魚類や甲殻類を主な餌とする。沖縄などではファミチキで釣られたりしているので、口に入る大きさの動物質のものなら何でも食べると思われる。筆者は一度だけ寝込みのアユを襲う本種の姿を目撃したことがある。河川生態系の最上位捕食者であり、本種の成魚を襲う外敵は存在しない。
紀伊半島ではほぼ全域で生息が確認されているが、分布の中心は半島南部である。南部の河川では個体数も多く珍しい存在ではない。和歌山県南部を流れる富田川のとある淵はオオウナギの生息地として古くから知られており、かつては本種の北限の生息地と考えられていたことから(現在は茨城県が北限である)国の天然記念物に指定されている。しかしながら近年では河川改修の影響により大型の本種が潜むような深い淵が消失してきており、和歌山県のレッドデータブックでは準絶滅危惧種に指定されている(和歌山県編,2012)。
本種は図体の割に(?)臆病で、ニホンウナギと比較するとすぐに逃げる傾向が強い。逃げる際の挙動は極めて俊敏であり、ライトを嫌がりすぐに隠れてしまうこともあり撮影は難しい。一方で昼間にお腹を上にして無防備に寝ていることもあるらしく(筆者は見たことがない…)、警戒心が強いのか弱いのかよくわからない魚である。
ニホンウナギは言わずと知れた水産重要種であるが、本種はニホンウナギと比べて不味とされており、和歌山でも食用にしたという話はあまり聞かない。宇井縫蔵の『紀州魚譜』によればほとんど食用にせず、肥料にしたり、家を建てる時に皮を柱の下に敷き白蟻除けに利用したりしたそうである(えぇ…白蟻除けって誰が最初にその効果を発見したの…)。しかし一度だけ60㎝弱の個体をかば焼きにして食べたことがあるが、ウナギ特有の旨みはニホンウナギより薄いものの脂はしっかり感じられおいしくいただけた。本種の食味評価が低いのは本種はニホンウナギに比べて生息環境の臭いが皮や身につきやすいこと、大型個体は上手く焼くことが難しく、生焼けだと臭みが出やすい(これはニホンウナギも同様)ことが理由ではないだろうか?
camera : E-M1 markⅡ
lens : LUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5, M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
strobe:D-200, D-2000
引用文献
宇井縫蔵.1924.紀州魚譜.282+43pp.紀元社.東京.
和歌山県編.2012.5 淡水魚類.保全上重要なわかやまの自然-和歌山県レッドデータブック-[2012年改訂版].81–106.p444.和歌山県環境生活部環境政策局環境生活総務課自然環境室.和歌山県.